ウラジーミル・ヴォローニン

ウラジーミル・ヴォローニン：モルドバの激動期を率いた政治家

ウラジーミル・ニコライ・ヴォローニン（Vladimir Nicolae Voronin）は、2001年から2009年までモルドバ共和国の大統領を務めた政治家です。彼の政治経歴は、ソビエト連邦時代から独立後のモルドバまで、激動の時代を反映しています。

生い立ちと初期の経歴

1941年、ヴォローニンはモルダヴィア共和国（現在の沿ドニエストル地域）に生まれました。スラブ風の姓名を持ちますが、民族的にはルーマニア系です。キシナウ技術専門高等学校、ソ連食品工業大学、ソ連共産党中央委員会付属社会科学アカデミー、ソ連内務省アカデミーで学びました。パン製造工場の企業長を経て、1971年に共産党に入党し、党活動を開始。モルダビア共産党中央委員会組織部副部長、ベンデル市共産党第一書記、モルダビア共和国内相を歴任しました。ソ連崩壊直前にはソ連駐ベトナム大使に任命されています。

モルドバ共産党第一書記、そして大統領へ

1994年、ヴォローニンはモルドバ共産党第一書記に選出されます。1998年の議会選挙で当選し、共産党は議席の4割を占めるまでに勢力を拡大しました。2001年にはペトル・ルチンスキー大統領による議会解散後に行われた選挙で共産党が勝利。ヴォローニンは大統領に選出されました。

大統領としての政策と課題

ヴォローニン政権は、当初、ロシア語の公用語化やロシア・ベラルーシ連盟国への参加を主張するなど、親ロシア的な政策を掲げていました。沿ドニエストルとの連邦化も目指しましたが、交渉は決裂。その後、モルドバ政府は欧州連合（EU）への接近を図り、ルーマニア語学校を閉鎖した沿ドニエストル地域に対する経済制裁を課しました。これに対し、ロシアはモルドバワインなどの輸入を禁止する措置を取り、関係は悪化しました。

大統領退任とその後

2009年の総選挙後、選挙結果に不満を持った野党支持者による大規模な反政府デモが発生し、議会や大統領府が襲撃される事態となりました。ヴォローニンは議長に就任し院政を敷こうとしましたが、大統領選挙での共産党候補の選出が失敗し、議会は解散。その後の選挙で共産党は議席を減らし、ヴォローニン自身も辞職しました。

人物像

ヴォローニンは既婚者で、2人の子供がいます。長男のオレグ・ヴォローニンは、モルドバ有数の企業家として知られています。

ヴォローニンは、ソ連崩壊後のモルドバにおいて、共産党を率いて政権を担い、親ロシア政策からEUへの接近、沿ドニエストル問題など、多くの課題に直面しました。彼の政治手腕は評価が分かれるものの、モルドバの現代史において重要な役割を果たしたことは間違いありません。

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