ウルトラ・ゾーン

スティーヴ・ヴァイのアルバム『ウルトラ・ゾーン』は、彼の音楽的探求心と卓越したギターテクニックが凝縮された作品です。1999年9月7日にエピック・レコードからリリースされたこのアルバムは、ヴァイの6作目のスタジオアルバムであり、インストゥルメンタル曲を中心に構成されていますが、その内容は非常に多彩で、単なるギターアルバムという枠には収まりません。

アルバムは全13曲で構成されており、そのうちの多くがインストゥルメンタルナンバーです。特に、2曲目の「ウルトラ・ゾーン」から5曲目の「ジブーン」、7曲目の「ウィンドウズ・トゥ・ザ・ソウル」、10曲目の「ラッキー・チャームズ」、そして11曲目の「フィーヴァー・ドリーム」は、ヴァイのギタープレイを存分に堪能できるインストゥルメンタル曲です。中でも「ウィンドウズ・トゥ・ザ・ソウル」は、セリフパートが挿入されている点が特徴的で、楽曲に深みを与えています。

特筆すべきは、4曲目の「フランク」です。この曲は、ヴァイが敬愛するミュージシャン、フランク・ザッパとの思い出を回想して作曲されたものです。ザッパへの深い敬意と愛情が込められた、感動的な一曲と言えるでしょう。また、5曲目の「ジブーン」は、同じく偉大なギタリスト、スティーヴィー・レイ・ヴォーンに捧げられた楽曲です。ヴォーンの魂を受け継ぐかのような、ブルージーで情熱的なギタープレイは必聴です。

さらに、13曲目の「エイジアン・スカイ」では、日本の人気ロックユニットB'zのメンバーである稲葉浩志と松本孝弘が参加しており、異色のコラボレーションが実現しています。稲葉のボーカルと松本のギタープレイがヴァイの音楽世界と融合し、新たなサウンドを生み出しています。

アルバムのクレジットにも注目してみましょう。ヴァイは、ほとんどの楽曲でギターだけでなく、ベース、キーボード、ドラムなど、様々な楽器を演奏しています。また、マイク・ケネリー、ジョン・セルジオ、フィリップ・バイノー、ブライアン・ベラーなどの実力派ミュージシャンも参加しており、楽曲のクオリティを高めています。

特に注目すべきは、10曲目の「ラッキー・チャームズ」における、ニールス・バイ・ニールセンによるオーケストラアレンジです。このアレンジは、楽曲に壮大さと深みを与え、単なるギターインストにとどまらない、音楽的な奥行きを感じさせます。アンディ・クリーヴス、デュエイン・ベンジャミンといった管楽器奏者の参加も、楽曲の魅力を引き立てる要素となっています。

このように、『ウルトラ・ゾーン』は、スティーヴ・ヴァイの多彩な音楽性と卓越した演奏技術が融合した、非常に聴きごたえのあるアルバムです。インストゥルメンタル曲が中心でありながら、各楽曲には明確なテーマやストーリーが存在し、聴く者を飽きさせません。フランク・ザッパやスティーヴィー・レイ・ヴォーンへのオマージュ、B'zとの共演など、話題性にも事欠かないこのアルバムは、ギターファンのみならず、幅広い音楽ファンに推薦できる傑作と言えるでしょう。

もう一度検索