エアスピード エンボイ

エアスピード AS.6 エンボイ

エアスピード AS.6 エンボイは、イギリスのエアスピード社が製造した双発レシプロ軽旅客機であり、また輸送機としても機能しました。初飛行は1934年6月に実施され、当時の航空機としては先進的な引込脚を有していました。機体の構造には木材が使用され、イギリス特有の設計が色濃く反映されています。

歴史的背景

この機体は、第二次世界大戦中にイギリス空軍の主要な上級練習機であるオックスフォードの原型ともなりました。また、エアレース用のヴァイスロイの基となったことでも知られています。旅客機としての生産は52機にのぼり、イギリス国内外で幅広く使用されました。特にオーストラリアやチェコ、スペインなどへも輸出されるなどその国際的な展開が注目されます。

日本においても1935年にエンボイの2機が輸入され、日本海軍が「エンボイ輸送機」として試用したり、三菱重工業がライセンス生産を行い、ひなづる型旅客輸送機を製造するなどの実績があります。

技術仕様

AS.6エンボイIIIの主要なスペックは以下の通りです。
- 全幅: 15.9 m
- 全長: 10.50 m
- 全高: 2.8 m
- 機体重量: 2,930 kg
- エンジン: アームストロング・シドレー チーター IX 空冷7気筒（350hp）×2
- 最大速度: 338 km/h
- 巡航速度: 309 km/h（高度2,230 mで出力75%の条件下）
- 航続距離: 1,046 km（高度3,050 mで出力62.5%の条件下）
- 上限高度: 6,858 m
- 乗員: 1名
- 乗客: 6名

この機体は、多様なモデルや派生機が展開され、それぞれ異なるエンジン搭載バリエーションがありました。例えば、AS.6Aはアームストロング・シドレー リンクス IVC（240hp）を装備し5機が製造され、AS.6Dはライト R-760-E2（350hp）を搭載して8機が製造されました。

派生機と特異な例

エアスピード AS.6は、様々な派生機を生み出しました。AS.6JCやAS.6JMのように軍事転用型もあり、それぞれ運用目的に応じた設計変更が行われています。特にAS.6JCモデルは貨物輸送を考慮した設計となっており、指定された機銃も搭載されるなど、軍事的な利用が進められました。

また、エンボイを基にしたAS.8 ヴァイスロイは、レース用に特化したモデルで、1機のみが製造されました。この機体にはスーパーチャージャー付きのエンジンが取り付けられ、性能がさらに向上しています。

日本での展開

日本海軍航空隊が評価用に購入した機体については「LXM1 エンボイ輸送機」と呼ばれ、さらなる多様な使用が期待されました。また、三菱重工業によるライセンス生産である「ひなづる型旅客輸送機」は1936年から1938年にかけて製造され、その際に使用されたエンジンは陣風もしくはアームストロング・シドレー リンクス、ウォルズレー エアリーズIIIのライセンス生産型です。

エアスピード AS.6 エンボイは、その歴史的な役割や技術的特性、国際展開によって、軽旅客機の一つとして重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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