エア・インディア・エクスプレス1344便着陸失敗事故

2020年 8月7日、インドのカリカット国際空港で、エア・インディア・エクスプレス1344便が着陸時に滑走路をオーバーランし、斜面に滑落するという痛ましい航空事故が発生しました。この事故により、乗員乗客合わせて21名が死亡、152名が負傷するという大惨事となりました。

事故の概要

エア・インディア・エクスプレス1344便は、ドバイ国際空港からカリカット国際空港へ向かうボーイング737-800型機でした。着陸の際、滑走路10への進入中に滑走路をオーバーランし、滑走路先の約10メートルの高低差がある斜面に滑落しました。機体は激しく損傷し、多くの乗員乗客が犠牲となりました。

事故機と乗員乗客

事故機はボーイング737-8HG（VT-AXH）で、2006年に製造された機体でした。機体には「INDIA GATE」という愛称が付けられ、尾翼にはインド門が描かれていました。

乗員乗客は合計190名で、そのうち乗客は184名（子供10名を含む）、乗員は6名でした。この事故で、機長と副操縦士を含む乗員2名と、乗客19名が死亡しました。

機長は元インド空軍のテストパイロットで、ボーイング737での飛行時間は10,000時間以上、機長としての経験も6,662時間と豊富な経験を持っていました。また、カリカット国際空港への着陸経験も27回以上ありました。

カリカット国際空港の状況

カリカット国際空港は、過去に「国内で最も危険な空港の一つ」と指摘されたことがあり、着陸は機長が行う必要がありました。滑走路はテーブルトップ滑走路で、滑走路安全区域（RESA）も基準を満たしておらず、専門家から安全性が懸念されていました。実際、民間航空省も滑走路の亀裂や水はけの悪さなどの問題を認識しており、一部の航空会社は大型機の乗り入れを中止していました。

事故発生時の状況

事故当日、1344便はドバイをほぼ定刻通りに離陸しましたが、カリカットへの進入時に追い風の影響を受け、2度の着陸復航を余儀なくされました。モンスーンによる大雨で視界も悪化していました。その後、滑走路10への着陸を試みましたが、着陸地点が滑走路のかなり奥になってしまい、速度も通常よりも速い状態でした。着陸後、機体は停止できずに滑走路をオーバーランし、斜面に滑落しました。

事故調査

事故発生後、民間航空総局（DGCA）と航空機事故調査局（AAIB）が調査を開始しました。コックピットボイスレコーダーとフライトデータレコーダーは回収され、分析が行われました。ボーイングも調査チームを派遣し、機体に欠陥がないかなどを調査しました。初期調査では、事故当時に追い風が吹いていたこと、着陸時の速度が速すぎたことなどが判明しました。

また、最終報告書では副操縦士が着陸復航を求めたにもかかわらず、機長が不安定な状態で着陸を強行したことが事故の主な原因として挙げられました。その他、滑走路の状況や機体の状態など、複合的な要因が重なったことも指摘されています。

事故後の影響

事故発生後、地元住民や救助隊によって迅速な救助活動が行われました。しかし、生存者の中には新型コロナウイルスに感染している者がおり、救助活動に当たった警察官も感染するなど、さらなる問題が発生しました。

この事故は、カリカット国際空港の安全性に関する問題を再認識させ、今後の航空安全対策の重要性を改めて浮き彫りにしました。

エア・インディア・エクスプレス1344便着陸失敗事故