エイブリー島

エイブリー島：岩塩とタバスコの島

ルイジアナ州南部に位置するエイブリー島は、世界有数の岩塩ドームとして知られています。その歴史は古く、1791年に岩塩の採掘が始まったことに端を発します。現在では、カーギル社が岩塩の採掘を担っています。しかし、エイブリー島は単なる岩塩の産地ではありません。周囲は豊かな自然に囲まれ、広大な竹林「ジャングル・ガーデンズ」など、多様な植生が存在しています。そして、世界中の人々に愛されるタバスコソースの発祥の地としても有名です。

地理と気候

エイブリー島は、バーミリオン川の支流に囲まれた湿地帯にあります。直径約4キロメートルの岩塩ドームが地盤を形成しており、海岸線から数キロメートル内陸に位置しています。島という名称ですが、海に浮かぶ島ではなく、周囲を湿地や水路に囲まれた、陸に囲まれた独特の地形です。亜熱帯湿潤気候に属し、温暖で湿度の高い気候が特徴です。

歴史：先住民からタバスコへ

エイブリー島での岩塩の利用は古く、アメリカ先住民が岩塩を採取していたという記録が残っています。その後、フランス人開拓者もこの地を知り、運河の通過地点として利用していました。ルイジアナ買収後、1791年に本格的な岩塩の採掘が始まると、プチアンス島と呼ばれ、アメリカ合衆国における重要な産業拠点となりました。

1818年には、ニュージャージーの富豪、ジョン・クレイグ・マーシュが島の土地を買い占め、プランテーションを始めました。彼の娘、サラはルイジアナの法学者、ダニエル・エイブリーと結婚し、プランテーションはエイブリー家の所有となります。その後、エイブリー家の娘マリーとその夫のエドモンド・マキルヘニーは、南北戦争の戦火を逃れて島に移住しました。しかし、エイブリー家がアメリカ連合国軍に岩塩を供給していたため、攻撃の標的となり、一家はテキサスへ移住することになります。

プランテーションの経営はマキルヘニーに委ねられ、彼は農園に残されていた唐辛子に着目し、タバスコソースの生産を始めました。マキルヘニーの卓越したビジネスセンスとタバスコソースの人気が相まって、エイブリー島は新たな繁栄の時代を迎えます。その後、タバスコは世界的なブランドへと成長し、エイブリー島の名を世界中に知らしめました。

1940年代には、ヌートリアというネズミの異常繁殖が島の農作物に深刻な被害をもたらしました。この被害は、島の生態系と経済に大きな影響を与えました。

自然と観光

現在、エイブリー島は岩塩の採掘とタバスコソースの生産に加え、観光地としても注目されています。広大な竹林「ジャングル・ガーデンズ」は、島を象徴する景観であり、多くの観光客を魅了しています。また、島の歴史やタバスコソースの製造工程を見学できる施設もあり、自然と歴史を満喫できる場所となっています。

エイブリー島は、岩塩、タバスコ、そして豊かな自然が織りなす、歴史と魅力に満ちた島です。その歴史は、アメリカ先住民から始まり、フランス人開拓者、エイブリー家、そしてマキルヘニー家へと、時代を超えて受け継がれてきました。現在も続く岩塩採掘と、世界的なブランドとなったタバスコソースは、エイブリー島の豊かな歴史と自然を象徴する存在と言えるでしょう。

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