エイミー・フィッシャー

エイミー・フィッシャー（Amy Fisher）は、1974年8月21日にエリザベス・フィッシャーとして生まれ、その人生は17歳で起こしたある事件によって大きく翻弄され、米国のメディアを長期間にわたり賑わせることとなった人物です。彼女は後にジャーナリストやポルノ女優としても活動しました。

彼女が全米にその名を知られるきっかけとなったのは、1992年5月にニューヨーク州ロングアイランドで発生した銃撃事件です。当時17歳だったエイミーは、愛人関係にあった中年男性、ジョーイ・バタフューコの自宅を訪れました。応対に出たのはジョーイの妻、メアリー・ジョー・バタフューコでした。エイミーはメアリー・ジョーの頭部を拳銃で撃ち、現場から逃走しました。この事件は、被害者が夫の愛人によって撃たれたというドラマチックな展開と、加害者がまだティーンエイジャーであったことから、センセーショナルに報じられました。特に、未成年であるエイミーと中年男性であるジョーイとの関係は、ゴシップとして加熱報道され、彼女はメディアによって「ロングアイランドのロリータ」という通称で呼ばれるようになりました。この通称は、事件の持つ性的側面と、当時社会的に大きな関心を集めていた未成年と成人男性の関係性を強調するものでした。

事件の後、ジョーイ・バタフューコも無関係ではいられませんでした。翌1993年、彼は当時未成年だったエイミーと肉体関係を持っていたことが明らかになり、法定強姦罪で有罪判決を受けました。エイミー自身は殺人未遂の罪で有罪となり、服役することになります。この一連の出来事は、全米で数ヶ月にわたって主要なニュースとして扱われ、社会的な議論を呼びました。当時、著名な歌手であるマドンナも、自身のコンサートでエイミーを擁護するような発言をしたことが報じられています。

このスキャンダラスな事件は、すぐに映像化の対象となりました。ドキュメンタリードラマ『The Amy Fisher Story』（日本語題『プワゾンの香り』）として制作され、エイミー役をドリュー・バリモアが、ジョーイ役をアンソニー・ジョン・デニソンが演じました。このドラマは日本でもNHK-BS2などで放映され、広く知られることとなりました。ジョーイ役を演じたデニソンは、後にインタビューで「俳優人生の中でも、バタフューコは最も難しい役柄の一つだった」と語っており、役作りの困難さを示唆しています。

エイミー・フィッシャーは、約7年間の服役を経て、1999年に仮釈放されました。社会復帰を目指した彼女は、いくつかの職に就きましたが、前科が明らかになるたびに解雇されるという厳しい現実に直面しました。しかし、フリーペーパー紙「New Island Ear」にコラムニストとして採用されたことを契機に、ジャーナリストとしての道を歩み始めます。彼女の執筆は高く評価され、2004年には職業ジャーナリスト協会からコラム/記事メディア賞を授与されました。その後も「ロングアイランド・プレス」などでコラムニストを務め、ジャーナリストとして一定の評価を確立しました。

ジャーナリストとしての活動を続ける一方で、彼女の人生は再び予期せぬ展開を迎えます。2007年10月、当時の夫によって無断でセックステープが販売され、流出するという騒動が発生しました。当初は販売に強く反対していたエイミーでしたが、後に夫と和解し、自ら積極的にポルノ作品を制作して有料サイトで販売するなど、ポルノ女優としてのキャリアを開始しました。代表作には『Amy Fisher: Totally Nude & Exposed』などがあります。また、ポルノ活動と並行して、クラブでストリッパーとしても働いていた時期があることも知られています。2010年7月には、インターネット上で2010年および2011年にポルノ作品へ出演する計画を発表するなど、この分野での活動継続を示唆していました。ポルノ女優としての特徴としては、その豊満なバスト、独特の色合いを持つ性器、そして腹部に施された蝶のタトゥーなどが挙げられ、これらが彼女のトレードマークとなりました。

エイミー・フィッシャーの人生は、若くして起こした凶悪事件から始まり、メディアの狂騒、服役、そしてジャーナリストとしての成功、さらにポルノ業界への転身と、極めて波乱に満ちています。その生き様は、米国の社会やメディアのあり方、そして個人の過去と向き合うことの困難さを問いかけるものとして、現在もなお時折語り草となっています。

もう一度検索