エキスパンションジョイント

エキスパンションジョイントについて

エキスパンションジョイント（Expansion joint）は、異なる特性を持つ構造物同士を分け、外部からの力が建物に伝わることを防ぐための接合部です。また、地震や温度変化、地盤の沈下などの外的要因を吸収し、建物の損傷を防ぐ役割があります。図面上では通常「Exp.J」と記されています。

用途

一般的にエキスパンションジョイントが必要とされるのは主に2つのケースです。まずは、異なる高さや材料で作られた建物が隣接している場合、特に二階建てと平屋や、鉄骨造と鉄筋コンクリート造などです。これらが水平に引き伸ばされる時、最大限の変形に合わせて少し隙間をあけておくことが重要です。

次に、異なる重さを持つ建物が軟弱な地盤の上に建てられる場合もエキスパンションジョイントが不可欠です。この場合、建物の上部だけでなく基礎部分も分けることで、それぞれの沈下量に差が生じても、新たな沈下を引き起こさず、建物の安定性を保つことができます。

コンクリートや鉄は温度変化により膨張や収縮を繰り返すため、それによってひびが入ることがあります。特に長細い建物において、この現象は顕著です。そのため、20mmから100mmの隙間を設け、外観を損なうことのないようにエキスパンションジョイントカバーを取り付けることが一般的です。このカバーはアルミやステンレス製で、建物のデザインを損なわないよう工夫されています。

建物の外観を見ると一体に見えますが、実は多くのビルやマンションは異なる形態や重さを持つ構造体が接合されて建てられています。そして、これらのつなぎ目にはエキスパンションジョイントが設けられています。特に渡り廊下など、重圧が集中する部分では多くの場合、急激な荷重の変化を避けるために設計されています。

この構造は、強い地震が発生した際に特に重要です。エキスパンションジョイントによって各構造体が異なる揺れ方をすることが可能になり、揺れが分散されることで、建物同士のぶつかりや損傷を防ぐ役割があります。しかし、エキスパンションジョイントの幅が限られていると、両者が揺れの影響で接触し合い、破損のリスクが高まることがあります。そのため、外部からの視点では亀裂が入り、建物が分断されているように見えることもあります。

歴史

以前は、建物同士を連結するための単なる部材に過ぎなかったエキスパンションジョイントですが、1980年代に製品が規格化され、各メーカーからの供給が始まりました。当時は水平方向の荷重のみを考慮したものが主流でしたが、1995年の阪神淡路大震災以降は、鉛直方向の荷重も考えられるようになり、耐震性が向上した製品が登場しました。また、東日本大震災後は建物の安全性がより重要視され、エキスパンションジョイントのクリアランス（隙間）の確保が求められる傾向があります。

クリアランスは、構造計算に基づいて設計者が決定しますが、一般的には建築基準法に基づいた地震による変形量の2倍程度が推奨されています。建物が高くなるにつれて揺れ幅も増えるため、その計算は非常に重要です。例えば、クリアランスは「エキスパンションジョイントの地上高さ×1/200」に基づいて計算されます。

まとめ

エキスパンションジョイントは建物にとって非常に重要な要素であり、様々な外的要因から建物を守る役割を担っています。現代建築においては、こうした構造を正確に設計し、適切なクリアランスを確保することが必要です。

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