エクスプローラー9号

エクスプローラー9号（Explorer 9、S-56A）は、アメリカ合衆国が打ち上げた人工衛星であり、大気密度の測定を専門に行うために設計された、一連の膨張型人工衛星の最初の成功例となりました。先行して打ち上げられたエクスプローラーS-56と、その目的と設計は同一でしたが、S-56は打ち上げに失敗しています。エクスプローラー9号は、そのユニークな構造と打ち上げ方法において、多くの注目を集めました。

この衛星は、表面がアルミニウム箔で覆われた球体であり、熱処理のために直径5.3cmの白い円が一様に描かれています。打ち上げ時には、長さ48.3cm、直径21.6cmのチューブ状に圧縮され、ロケットの四段目の先端に格納されていました。ロケットの三段目と四段目が分離する際、窒素ガスを利用してチューブを球状に膨らませ、分離バネによって四段目と衛星を切り離すという複雑な手順を踏みました。この膨張機構は、衛星が宇宙空間で所定の形状を維持するために不可欠でした。

球体は、赤道部分にマイラー（ポリエステルフィルムの一種）を使用し、二つのアルミニウム箔の半球に分離されています。この半球がアンテナとして機能し、地球との通信を可能にしました。電力供給は、太陽電池と充電式バッテリーによって行われ、長期間にわたる観測を可能にしました。エクスプローラー9号は、エネルギー効率にも優れた設計がなされていました。

特筆すべき点として、エクスプローラー9号は、純粋な固体燃料ロケットによって軌道上に打ち上げられた最初の人工衛星であり、またワロップス島から打ち上げに成功した最初の人工衛星でもあります。これらの事実は、宇宙開発の歴史において重要なマイルストーンとして記録されています。エクスプローラー9号の成功は、以後の膨張型衛星の開発に大きな影響を与えました。

エクスプローラー9号は、1961年2月16日に打ち上げられ、その役割を終えた後、1964年4月9日に大気圏に再突入し、燃え尽きました。この衛星のデータは、大気密度の理解を深める上で重要な役割を果たし、科学研究に貢献しました。NASAの国立宇宙科学データセンターには、このミッションの詳細な記録が残されており、現在も参照することが可能です。

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