エコリージョン

エコリージョン（生態地域）とは

エコリージョン（Ecoregion）とは、生物地理学的な地域区分の一つで、生物地理区よりもさらに詳細な地域を指します。日本語では生態域、生物域とも呼ばれます。これは、ある地域に特有の動植物が生息し、相互作用を持つまとまりのある生態系を指す概念です。

エコリージョンの定義

世界自然保護基金（WWF）による定義が広く用いられています。それによると、エコリージョンは以下の特徴を持つ地域とされます。

地理的に異なる特徴的な生態系の集合体である
その地域に生息する生物種の活動が、その地域内で完結する
環境を特徴づける共通点を共有している
持続可能な生態学的相互作用が維持されている

つまり、エコリージョンは、単に生物が生息する場所ではなく、生物同士、また生物と環境が密接に結びついた、機能的な生態系を指します。

エコリージョンの重要性

エコリージョンという概念が注目されるようになった背景には、生態系への関心の高まりがあります。特に、景観の研究や管理において、空間的な範囲を捉える必要性が認識されるようになりました。個々の生態系を足し合わせただけでは見えてこない、より大きな生態系のまとまりを捉えようとする試みがエコリージョンです。

エコリージョンは、生物多様性の保全において重要な役割を果たします。なぜなら、エコリージョンは、生物種の分布、固有性、特異性を考慮した上で、優先的に保護すべき地域を特定するための基準となるからです。WWFが作成した「グローバル200」は、この考えに基づいて選定された、特に重要なエコリージョンのリストです。

エコリージョンの分類

WWFは、地球上の陸域を825ヶ所、淡水域を約450ヶ所のエコリージョンに分類しています。これらの分類は、生物多様性のホットスポットを特定し、保全活動を行う上で重要な指標となります。エコリージョンごとに異なる生態系、生物相が存在するため、それぞれに合わせた保全戦略が必要です。

エコリージョンと関連する概念

エコリージョンは、生物地理学、生態学における重要な概念であり、以下のような関連用語があります。

生物地理学：生物の地理的な分布を研究する学問
生物地理区：生物相に基づいて区分された地域
生物群系：気候や植生によって区分された地域
生態系：生物と環境が相互作用するまとまり
生息地：生物が生息する場所

これらの概念と合わせて理解することで、エコリージョンについての理解を深めることができます。

エコリージョンに関する研究

エコリージョンに関する研究は、生物多様性の保全、持続可能な開発、地球温暖化の影響評価など、多岐にわたる分野で応用されています。例えば、エコリージョンの変化を監視することで、環境の変化を早期に把握し、対策を講じることが可能になります。

参考文献

Olson, David M.; Dinerstein, Eric; Wikramanayake, Eric D.; et al. (2001). “Terrestrial ecoregions of the World: a new map of life on Earth”. BioScience 51 (11): 933–938.
Burgess, Neil; Hales, Jennifer D'Amico; Underwood, Emma; Dinerstein, Eric; Olson, David; Illanga, Itoua; Schipper, Jan; Ricketts, Taylor et al. (2004). Terrestrial Ecoregions of Africa and Madagascar – A Conservation Assessment. Washington DC: Island Press.
Huntley, Brian J. (2019). “Angola in Outline: Physiography, Climate and Patterns of Biodiversity”. In Huntley, Brian J.; Russo, Vladimir; Lages, Fernanda et al.. Biodiversity of Angola: Science & Conservation: A Modern Synthesis. Springer Nature, Cham. pp. 15–42.

まとめ

エコリージョンは、生態系を理解し、保全するための重要な概念です。地球上の生物多様性を守るために、エコリージョンの概念を理解し、保全活動に積極的に参加することが求められています。

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