エジプト人 (小説)

エジプト人（Sinuhe egyptiläinen）

『エジプト人』は、フィンランドの作家ミカ・ワルタリによって書かれた歴史小説であり、1945年にフィンランド語で初版が発行されました。この物語は、古代エジプトを背景にした壮大な人生の旅を通じて、一人の男の成長と葛藤を描いています。

あらすじ

物語は、自由を失った名士である主人公シヌへの視点から語られます。彼は幼い頃に両親を知らず、アメンホテプ3世が治める時代、葦船で川に流される運命にあります。そこで、医者センムトとその妻キパに拾われたシヌへは、彼らの子として育てられることになります。シヌへの名前は、古代エジプトの物語に登場する主人公に由来し、彼は愛情深い家庭でのびのびと成長します。

青年期に達したシヌへは、父親の影響を受けて医術の道を選び、ついに医者になります。しかし、彼の人生は毒婦ネフェルネフェルネフェルの陰謀によって一変します。彼は全てを失い、自らの運命を受け入れることなくエジプトを離れ、奴隷カプタと共に諸国を旅しながら自らを見つめ直します。

その旅の途中でシヌへは、さまざまな人々との出会いによって新たな価値観と考え方を養うことになります。彼の帰国時には、エジプト国内ではアクナートン（アメンホテプ4世）が唯一神アトンの教えを強制し、多神教信仰を抑圧していました。それにより国は混乱し、絶え間ない動乱が続いていました。

シヌへは、アクナートンの治世の終焉や、かつての友であるホレムヘブの登場など、時代の変遷を目の当たりにします。彼の物語は、単なる個人の成長だけでなく、歴史的な背景との絡み合いが描かれ、多くの教訓を私たちに語りかけます。

登場人物

• - シヌへ: この物語の主人公であり、孤児として育った医者。幼少期に兵士になる夢を抱いていたが、父センムトから見せられた兵士の悲惨な未来を知り、医術に専念することを決意します。彼は努力家で真面目な性格を持っていますが、ネフェルネフェルネフェルとの出会いによって、自らの道を大きく誤ります。その結果、彼の人生は激変し、奴隷カプタと共に旅をする運命にあります。

日本語版

本作は日本でも複数の版が出版されています。1958年には平凡社から『世界文学全集』第34巻として刊行され、飯島淳秀による翻訳が提供されました。また、1960年には角川文庫から全3冊の形で文庫化され、その後1989年に復刊されました。更には1995年に小学館から『ミイラ医師シヌへ』として抄訳も出版され、訳者の木原悦子が手掛けています。最新の版は2024年に静風社からミカ・ヴァルタリ著、セルボ貴子翻訳による全2冊が予定されています。この版は初めての原語からのノーカット版となっています。

関連項目

• - エジプト人 (映画): 本作は映画化され、ストーリーの視覚的表現も行われました。

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