エストニア・ソビエト社会主義共和国

エストニア・ソビエト社会主義共和国：成立、占領、そして独立

エストニア・ソビエト社会主義共和国（エストニア語: Eesti Nõukogude Sotsialistlik Vabariik、ロシア語: Эстонская Советская Социалистическая Республика）は、ソビエト連邦の構成共和国の一つでした。第二次世界大戦中の1940年、ソ連軍の侵攻と占領によってエストニア共和国は崩壊し、その跡地に名目上設立されました。

成立の背景

1939年8月23日、独ソ不可侵条約が締結され、エストニアはソ連の勢力圏に組み込まれました。その直後、ソ連はエストニアに対し、軍事基地の建設と駐留兵の配置を要求。エストニア政府はこれを受け入れざるを得ませんでした。第二次世界大戦が勃発すると、1940年にソ連はラトビア、リトアニアと共にエストニアを占領・編入しました。エストニアは、ソ連の支配下におかれることとなったのです。

ソ連による占領と支配

1940年6月12日、ソ連はエストニアの完全な軍事封鎖を命令。6月14日には、フィンランドの旅客機を撃墜し、外交文書を奪取しました。6月16日、ソ連はエストニアに対し、新政府の樹立を要求する最後通牒を突きつけました。エストニア政府は、パリ不戦条約に基づき軍事抵抗を断念。ソ連軍はエストニア全土を占領し、抵抗するエストニア軍を武装解除しました。その後、ソ連は国家行政機関を解体し、ソ連幹部を送り込み、大弾圧を実施しました。6月21日には、ソ連の傀儡政権が樹立され、エストニアはソ連の一部として組み込まれることとなりました。

国際的な非承認と法的継続性

しかし、エストニアのソ連編入を法的に認める国は少数でした。多くの国は、ソ連による実効支配を事実上認めるか、全く認めませんでした。亡命したエストニアの外交官や領事を公認する国も存在し、法的継続性の原則が生まれました。これは、法的にはエストニアは1940年から1991年まで占領下にあっても独立国家のままであるという考え方です。

独立回復への道

1980年代後半、ソ連のペレストロイカ政策が進む中で、エストニアでも独立運動が高まりました。1988年11月16日、エストニアはソ連支配下にあった国々の中で初めて、国家主権を宣言しました。1990年3月30日には、エストニア共和国が1940年以降違法に占領されていたことを宣言し、完全な独立回復のための移行期間を発表。5月8日には、国名から「ソビエト社会主義共和国」を削除し、エストニア共和国を正式名称としました。

独立の達成

1991年8月20日、エストニア議会はついに完全な独立回復を宣言しました。ソ連は同年9月6日にエストニアの独立を承認し、エストニアは再び独立国家として国際社会に復帰しました。

エストニア・ソビエト社会主義共和国は、ソ連の支配下にあった時代の象徴であり、エストニアの人々にとっては苦難の歴史を物語る存在です。しかし、その後の独立運動と独立達成は、エストニアの強い意志と不屈の精神を示すものであり、現代のエストニアの礎となっています。

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