エドゥアルト・ハンスリック

エドゥアルト・ハンスリックについて

エドゥアルト・ハンスリック（1825年 - 1904年）は、チェコのプラハに生まれ、オーストリアのウィーンで活躍した音楽評論家です。彼の音楽思想は、音楽美に関する視点からの分析だけでなく、当時の音楽の潮流に対する批判をも含んでいました。特に、彼はリヒャルト・ワーグナーの作品に対し痛烈な批判を行い、逆にヨハネス・ブラームスの音楽を支持しました。彼の主著である『音楽美について』（1854年）は、オペラに対する否定的な見解を示し、音楽の自律的な価値基準の重要性を強調したものとして知られています。

経歴

ハンスリックは法学を学び、その分野で学位を取得しましたが、音楽が彼の情熱であると認識し始め、音楽評論に取り組むようになりました。彼は特に、ウィーンの小新聞や後には『Wiener Allgemeine Musik-Zeitung』や『Neue freie Presse』にも寄稿し、音楽界での名を高めていきました。ウィーン大学では無給講師から教授、そして名誉博士号を受けるに至ります。常に音楽コンテストで審査員を務め、音楽と批評の世界で影響力を持つ存在となりました。特に変わった点として、1904年の死去に至るまでの間、彼は重要な公演に関する記事を執筆し続けました。

ブラームスとの関係

ハンスリックはブラームスと親しい友人関係にあり、彼の音楽に対して深い理解と評価を寄せていました。初演前に新作を聴くことも多く、ブラームスの作品が持つ深い美しさを次々に賛美しました。しかし、ブラームス自身は「ハンスリックが書いたものを読むと、彼は私の音楽を理解していないのではないか」との考えを表明したこともあったため、彼の評価が常に一致していたわけではありません。

ワーグナー批判

ハンスリックはワーグナー作品の批評家としても知られ、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』では、ワーグナー自身が彼をモデルにしたキャラクターを登場させるほどまで、自身の存在を世に知らしめていました。彼の批評はしばしば厳しく、リストの作品に対しても「トライアングル協奏曲」と揶揄するなど、辛口のコメントを残していました。彼はまた、アントン・ブルックナーやチャイコフスキーなど、多くの作曲家に対しても手厳しい批評を行い、その姿勢は一貫していました。

ハンスリックの後世への影響

彼の評論は、当時の音楽界における重要な文献と見なされており、現代においても彼の見解には価値があるとされています。特に絶対音楽を高く評価し、標題音楽に否定的な立場を取ったことは、後の音楽批評においても影響を与え続けています。また、ハンスリックはワーグナーに対しての批判を反ユダヤ主義との関連で捉えられることを避け、自らの出自に関して虚偽の申し立てをしたことも、彼の複雑な立場を示しています。

総括

彼の業績や思想は、音楽の評価や批評に新たな視点を提供し、多くの作曲家や音楽愛好家に影響を与えました。音楽の美しさや自律性を重視し、時代を超えて後世にその言葉が生き続ける存在の一人と言えるでしょう。

もう一度検索