エドゥアルト・フォン・エンゲルト

エドゥアルト・フォン・エンゲルト（Eduard Ritter von Engerth, 1818年5月13日 - 1897年7月28日）は、オーストリア帝国（現オーストリア）を代表する画家の一人です。彼は、歴史画、風俗画、肖像画など、多岐にわたるジャンルでその才能を発揮しました。

生涯

エンゲルトは、当時プロイセン王国領であったシレジアのプレス（現在のポーランドのプシュチナ）で、画家の息子として誕生しました。兄には、著名な鉄道技術者であるヴィルヘルム・エンゲルト（Wilhelm Freiherr von Engerth, 1814-1884）がいます。幼少期から父親の指導の下で美術の基礎を学び、その後、ウィーン美術アカデミーに進学し、レオポルト・クーペルヴィーザー（Leopold Kupelwieser）に師事しました。

1845年、エンゲルトは歴史画でアカデミーの賞を受賞し、その才能を認められました。この受賞を機に、奨学金を得て1847年からは、イタリア、フランス、イギリス、中東を巡る旅に出ました。これらの地での経験は、彼の芸術観を大きく形成する要因となりました。

1854年には、プラハの美術アカデミーの校長に任命され、その後は主に肖像画や人物画を手がけるようになりました。また、装飾画家としても活躍し、ウィーンのアルトラーヒェンフェルダー教会（Altlerchenfelder Pfarrkirche）の装飾画をヨーゼフ・フォン・フューリッヒ（Josef von Führich）と共に制作しました。ウィーンでは、時の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世とその皇后エリーザベトの肖像画も描いています。

1865年、エンゲルトはウィーン美術アカデミーの教授に就任しました。さらに1868年には、新しく建てられた王立宮廷歌劇場の装飾画を担当し、その芸術的才能を遺憾なく発揮しました。1871年には、ベルヴェデーレ宮殿のギャラリーの館長に任命され、1882年からは、同ギャラリーの収蔵目録を3巻にわたって出版しました。この収蔵目録は、彼の学術的な側面を示すものとして重要です。

作品の特徴

エンゲルトの作品は、歴史的な出来事を描いたものから、当時の風俗を捉えたもの、そして著名人の肖像画まで多岐にわたります。彼の絵画は、写実的な表現と巧みな構図が特徴であり、当時の社会や文化を色濃く反映しています。また、色彩感覚にも優れており、繊細で美しい色彩表現は、彼の作品に深みを与えています。

彼の作品は、19世紀のオーストリア美術を語る上で欠かせないものであり、現在でも多くの人々に鑑賞されています。

代表作品（画像情報が不十分のため、テキストでの紹介に留めます）

エンゲルトの代表作品としては、以下のようなものが挙げられます。

歴史画：歴史的な出来事を題材にした作品で、その時代の衣装や背景が緻密に描かれています。
風俗画：当時の人々の生活や風俗を生き生きと捉えた作品で、彼の観察眼の鋭さがうかがえます。
肖像画：王侯貴族から一般市民まで、幅広い人物を描いた作品で、対象人物の個性がよく表現されています。
装飾画：教会や劇場などの建築物を彩る装飾画も手掛けており、その色彩感覚とデザイン力が発揮されています。

参考文献

Eduard Leisching (1904). "Engerth, Eduard Ritter von". Allgemeine Deutsche Biographie (ドイツ語). Vol. 48. Leipzig: Duncker & Humblot. pp. 786–788.
Heinrich Fuchs: Die österreichischen Maler des 19. Jahrhunderts. Selbstverlag Dr. Heinrich Fuchs, Wien, 1972

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