エドゥアルト・ロッセリ

エドゥアルト・エルガルトヴィチ・ロッセリ

エドゥアルト・エルガルトヴィチ・ロッセリ（ロシア語: Эдуард Эргартович Россель、1937年10月8日 - ）は、ロシア連邦の政治家です。ドイツ系ロシア人として知られ、特にスヴェルドロフスク州の首長として長期間にわたりその地位を保持しました。彼の政治キャリアは、ソビエト連邦の崩壊期からロシア連邦の初期にかけての激動の時代と重なります。

生い立ちと家族の背景

1937年10月8日、ロシア連邦共和国のゴーリキー州（現在のニジニ・ノヴゴロド州）で誕生しました。彼の幼少期は、スターリン体制下での悲劇に見舞われました。父と祖父は、彼が生まれた年に無実の罪によって銃殺されるという過酷な運命をたどり、母もまた逮捕されました。このような家族の歴史は、後の彼の人生観や政治的信条に影響を与えたと考えられます。

技術者から政治家へ

ウラル地方で育ったロッセリは、スヴェルドロフスク鉱山大学で学びました。卒業後、ウラル地域の建設現場で実務経験を積み、技術者としてのキャリアを歩み始めます。さらに、ウラル総合技術大学の大学院で研鑽を積み、技術学の博士候補となりました。1962年からは母校であるスヴェルドロフスク鉱山大学で研究員として勤務した後、1963年から1975年にかけては、企業合同「タギルストロイ」において現場監督、生産部長、技師長といった要職を歴任しました。その後も、建設コンビナート「タギルチャシストロイ」（1975年から）、「グラヴスレドラルストロヤ」（1983年から）といった主要な建設組織の責任者を務め、建設分野での実績を重ねました。

専門分野での成功を経て、ロッセリは政治の世界へと転じます。1990年にはスヴェルドロフスク州の人民代議員に選ばれ、さらに州ソビエト執行委員会の議長に就任しました。翌1991年には、同州ソビエトの議長を務めました。この頃、ソ連の政治情勢は大きく揺れ動いており、1991年8月に発生した保守派によるクーデターにおいては、後のロシア大統領となるボリス・エリツィンを支持する立場を明確にしました。

スヴェルドロフスク州の首長へ

クーデター失敗後、エリツィン体制下で論功行賞的な意味合いもあり、ロッセリは1991年11月にスヴェルドロフスク州の行政長官に任命されました。これは、ソビエト連邦が崩壊へと向かう渦中での重要な人事でした。

行政長官として州のかじ取りを担う中で、ロッセリは中央集権的な体制への反発とも取れる独自の地域構想を打ち出します。1993年7月には、ウラル地域における経済的・政治的自立を目指す「ウラル共和国構想」を提唱し、これに関する住民投票を実施しました。この構想は住民の約80%という高い支持を得ましたが、ロシア連邦中央政府、特にエリツィン大統領はこれを連邦の分断につながる動きとして強く警戒しました。結果として、住民投票実施の直後である1993年11月10日、ロッセリはエリツィンによって行政長官の職を解任されました。

しかし、彼は政治活動を停止しませんでした。解任された同日、ウラル地域の経済協力連合の総裁に就任し、地域における影響力を維持しようと努めます。さらに、1993年12月に行われたロシア連邦議会選挙では、上院にあたる連邦会議の代議員に当選し、中央政治の舞台に進出しました。

スヴェルドロフスク州知事としての長期政権

連邦議会代議員として活動する傍ら、ロッセリは再びスヴェルドロフスク州での政治基盤固めを進めました。1994年の州議会選挙で当選し、同年4月には州議会の議長に選出されます。そして、1995年8月に行われたスヴェルドロフスク州知事選挙の決選投票で勝利し、かつて解任された州の首長に再び就任しました。

知事就任後、彼は自身の政治勢力拡大を目指し、1995年12月の連邦議会下院選挙に向けて選挙ブロック「祖国の変貌」を結成して臨みましたが、この選挙では敗北を喫しました。この敗北を機に、ロッセリはそれまで比較的反エリツィンの立場を取ることが多かった姿勢を転換し、1996年の大統領選挙ではエリツィン支持を表明するに至りました。

1999年にはスヴェルドロフスク州知事に再選され、その後も長期にわたりその地位を維持しました。彼は2009年11月23日に退任するまで、通算18年間にわたってスヴェルドロフスク州のトップを務め、ウラル地方における最も有力な政治家の一人として多大な影響力を持ち続けました。

彼の長期にわたる知事在任期間は、ロシアの連邦制の形成期と重なり、地方政府の権限や中央との関係性のあり方を示す一例となりました。特に「ウラル共和国構想」は、地域の自治権を巡る中央と地方の緊張関係を象徴する出来事として記憶されています。

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