エドウィジュ・フェネシュ

エドウィジュ・フェネシュ（Edwige Fenech, 1948年 12月24日 - ）は、北アフリカのフランス領アルジェリアで生を受け、主にイタリアを拠点に女優、そして映画製作者として多大な成功を収めた人物です。父方にマルタ、母方にシチリアの血を引く彼女は、その異国情緒あふれる美しさと類稀なる才能で、イタリア映画界において一時代を築きました。

女優としての輝かしいキャリア

1970年代から1980年代にかけては、エドウィジュ・フェネシュの女優としてのまさに黄金期でした。その圧倒的な美貌と鮮烈な存在感、とりわけ強いセックスアピールを武器に、彼女はイタリア映画界において瞬く間にその地位を確立します。この時期、彼女は多岐にわたるジャンルの映画に出演しましたが、特に観客を魅了したのは、イタリア独自のジャンルであるジャッロ（猟奇殺人ミステリー）や、緊張感あふれる刑事スリラー、そしてユーモアと官能が入り混じる艶笑喜劇（Commedia sexy all'italiana）でした。1970年の『ファイブ・バンボーレ』をはじめ、これらのジャンルで数多くのヒット作に出演し、名実ともにスターダムを駆け上がりました。

彼女のキャリアにおいて特筆すべきは、名匠セルジオ・マルティーノ監督との強力なコラボレーションです。ジャッロ映画の傑作として名高い『わらの階段』、『幻想殺人』、『影なき殺人者』など、多くの作品で彼女はマルティーノ監督のミューズとなり、その独特な世界観に不可欠な存在となりました。二人のタッグは、単なる女優と監督の関係を超え、イタリア映画史に残る一時代を築いたと言えるでしょう。そのエキゾチックな魅力と確かな演技力は、多くの映画ファンを虜にしました。

テレビ、そして製作活動へ

1980年代に入ると、エドウィジュ・フェネシュは活動の場を映画だけでなくテレビにも広げました。人気テレビタレントとして、バーバラ・ブーシェをはじめとする当時のイタリアを代表するスターたちと共に、主要なトーク番組やバラエティ番組に出演し、お茶の間でもその存在感を強く印象づけました。スクリーンとはまた異なる親しみやすい魅力で、幅広い層からの支持を得たのです。

単なる出演者としてだけでなく、エドウィジュ・フェネシュは映画製作の分野でも優れた手腕を発揮しました。プロデューサーとして、あの名優アル・パチーノと共同で、ウィリアム・シェイクスピアの古典を映画化した『ヴェニスの商人』(2004年) などの作品を手掛け、国際的な舞台でもその才能を示しました。製作の側面から映画に関わることで、彼女のキャリアはさらに奥行きを増しました。

後年の活動とプライベート

長らく女優としての第一線からは距離を置いていた彼女でしたが、2007年に映画ファンの間で大きな話題となったカムバックを果たしました。熱狂的なファンであり、映画監督であるクエンティン・タランティーノからの熱烈なオファーに応える形で、イーライ・ロス監督によるホラー映画『ホステル2』に出演。かつてのファンを喜ばせると同時に、若い世代の新たな観客にもその健在ぶりを見せつけました。

彼女のプライベートにも注目が集まりました。1990年代半ばには、イタリア経済界の重鎮であり、自動車メーカー「フェラーリ」の元会長としても知られる実業家、ルカ・コルデーロ・ディ・モンテゼーモロ氏との婚約が発表され世間を騒がせましたが、この婚約は後に解消されています。

また、彼女の息子であるエドウィン・フェネック氏は、日本のフェラーリ法人であるフェラーリ・ジャパンの社長を務めた経歴を持ち、現在はフェラーリの北アメリカ部門の社長を務めるなど、母親とは異なるビジネスの分野で世界的に活躍しています。

エドウィジュ・フェネシュは、その類稀なる美貌と多才さで、1970年代から1980年代にかけてのイタリア映画界において、コメディからスリラーまでをこなす唯一無二の存在として輝きを放ちました。女優、テレビタレント、そして製作者として、多岐にわたる分野で成功を収めた彼女は、今なお多くの人々に記憶されるイタリア映画史を代表するスターの一人です。

外部リンク

* Edwige Fenech - IMDb（英語）

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