エドワード・アーサー・ミルン

エドワード・アーサー・ミルン（Edward Arthur Milne、1896年 2月14日 - 1950年 9月21日）は、20世紀前半に活躍したイギリスの傑出した数学者であり天体物理学者です。彼の研究は、恒星の構造から宇宙全体の進化に至るまで、物理学と天文学の様々な分野に及び、多大な貢献をしました。王立協会のフェローでもありました。

ヨークシャー州のキングストン・アポン・ハルに生を受けたミルンは、優れた学才を示し、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジで学びました。初期のキャリアにおいては、太陽物理観測所で副所長を務め、後に母校トリニティ・カレッジで講師として教鞭をとりました。これらの職を通じて、彼は天体物理学、特に恒星に関する研究に深く関わることになります。

ミルンの初期における最も重要な研究は、恒星の内部構造と恒星大気の物理過程に関するものでした。彼は恒星内部でのエネルギー輸送や、大気中での放射の平衡、スペクトル線の形成といった複雑な問題を理論的に解析しました。これらの先駆的な研究は、恒星がどのように輝き、進化していくのかを理解する上で基礎となるものでした。この恒星物理学における顕著な業績に対し、彼は権威あるいくつかの賞を受賞しています。1929年には王立協会のベーカリアン・メダル、1935年には王立天文学会ゴールドメダル、1941年には王立協会のロイヤル・メダル、そして1945年には太平洋天文学会が授与するブルース・メダルを獲得しました。これらの受賞歴は、当時の学界における彼の評価の高さを物語っています。

その後、ミルンは研究の焦点を宇宙論へと移します。1932年以降、彼は宇宙全体の構造と進化に関心を寄せ、特にアインシュタインの一般相対性理論が提示する宇宙モデルについて深く考察しました。彼は、一般相対性理論のアインシュタイン方程式の特定の解として、時間とともに線形的に膨張する宇宙モデルを導き出しました。このモデルは「ミルン・モデル」あるいは「ミルン宇宙」として彼の名が冠されており、初期の膨張宇宙論における重要なモデルの一つと位置づけられています。このモデルは、物質が存在しない真空の宇宙が、光速を超えない速度で線形的に膨張するという特殊なケースを記述しており、その後の宇宙論研究に影響を与えました。

アカデミアにおけるミルンのキャリアは輝かしいものでした。マンチェスター大学で応用数学の教授を務めた後、オックスフォード大学では数学の教授として多くの学生や研究者を指導しました。彼の講義や著作は、当時の物理学や数学の最前線に触れる機会を提供し、後進の育成にも力を注ぎました。

ミルンはまた、その研究成果をまとめたいくつかの重要な著書を刊行しています。主な著書には、恒星の熱力学を扱った『Thermodynamics of the Stars』（1930年）、白色矮星に焦点を当てた『The White Dwarf Stars』（1932年）、宇宙論に関する彼の思想を述べた『Relativity, Gravitation and World-Structure』（1935年）、そして運動学的宇宙論を展開した『Kinematic Relativity』（1948年）などがあります。これらの著書は、彼の幅広い研究分野と深い洞察を示すものであり、現在でも参照されることがあります。

晩年はダブリンで過ごし、1950年にその地で生涯を終えました。エドワード・アーサー・ミルンは、恒星物理学から宇宙論に至るまで、理論天体物理学の確立と発展に尽力した功績により、科学史にその名を刻んでいます。

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