エドワード・リー・グリーン

エドワード・リー・グリーン：アメリカ植物学の先駆者

エドワード・リー・グリーン（Edward Lee Greene, 1843年8月10日 - 1915年11月10日）は、19世紀のアメリカ合衆国で活躍した植物学者です。彼は、植物学の研究者としてだけでなく、聖職者としても活動し、その多岐にわたる経歴と業績で知られています。

生い立ちと初期の植物学への関心

グリーンはロードアイランド州ホプキントンで生まれました。16歳でウィスコンシン州のアルビオン・アカデミーに入学し、そこでスウェーデン人博物学者トゥーレ・クムリエンから植物学の手ほどきを受けました。クムリエンとの野外調査を通じて、グリーンは植物学への深い興味を抱くようになります。

南北戦争と植物採集

南北戦争中、グリーンは父親や兄弟とともに北軍側の民兵に加わりました。3年間の軍務の間、テネシー州、ケンタッキー州、アラバマ州といった南部各地を転戦しましたが、その間も植物採集を続けました。この経験が、彼の後の植物学研究に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。

西部での植物調査と聖職者としての道

軍務を終えたグリーンはアルビオン・アカデミーに戻り、学位を取得。その後、ミシシッピ川以西の植物調査を志すようになります。エイサ・グレイやジョージ・エンゲルマンといった著名な植物学者の助けを得て準備を整え、1870年から西部での植物調査を開始しました。1871年にはコロラド州で宗教的な霊感を受け、米国聖公会で聖職者となるための教育を受け、1873年に叙階されました。カリフォルニア州ヴァレーオで牧師として活動を始め、その後も南西部各地の教会を巡りながら、植物の収集を続けました。この時期には、ハナシノブ科フロックス属の新種 Phlox hirsuta も発見しています。

大学教授と命名法の改革

グリーンは、1882年からカリフォルニア大学で講義を行うようになり、カリフォルニア科学アカデミーの植物標本館の学芸員にも就任しました。1885年にはカリフォルニア大学バークレー校の初代植物学教授に任命され、1887年には植物学雑誌 Pittonia を創刊しました。当時のアメリカでは、ヨーロッパとは異なる独自の植物命名法が用いられていましたが、グリーンは1892年に国際植物命名委員会の代表の一人として、ジョン・マール・コールターやナサニエル・ロード・ブリトンとともに参加し、ヨーロッパ流の命名法への改定を主張しました。しかし、この主張は多くの植物学者や大学の学長との対立を生み、彼はカリフォルニア大学を辞職することになりました。

アメリカ・カトリック大学と晩年

カリフォルニア大学を辞職後、グリーンはワシントンD.C.のアメリカ・カトリック大学に移り、1895年から1904年まで教鞭をとりました。その後は、スミソニアン協会の植物学無給研究員となり、著作活動に専念しました。彼の膨大な資料や標本は、10年以上の歳月をかけてスミソニアン協会に移管されました。

主な著作

Flora franciscana (1891–1897)
Manual of the Botany of the Region of San Francisco Bay (1894)
Landmarks of Botanical History* (1983, 死後出版)

エドワード・リー・グリーンは、アメリカ植物学の発展に大きく貢献した人物として、その名が記憶されるべきでしょう。

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