エネルギー・気候変動省

イギリスにおけるエネルギー・気候変動政策とエネルギー・気候変動省

イギリスのエネルギー・気候変動省（Department of Energy and Climate Change, DECC）は、2008年から2016年まで存在した行政機関です。同省は、エネルギー政策と気候変動対策を統合的に担うことを目的として設立されました。ビジネス・企業・規制改革省（エネルギー関連）と環境食糧農林省（気候変動関連）の一部機能を統合することで、より効果的な政策立案と実行を目指しました。

設立と統合

DECCは、2008年10月3日、当時のゴードン・ブラウン首相によって発足しました。しかし、2016年7月、テリーザ・メイ首相の下でビジネス・イノベーション・技能省と統合され、ビジネス・エネルギー・産業戦略省へと組織改編されました。この統合は、政府の効率性向上と政策の一貫性を図るための措置でした。

歴代大臣

DECC大臣は、エネルギーと気候変動に関する政策決定の責任者でした。2008年10月から2010年5月までの主な大臣は以下の通りです。

エネルギー・気候変動大臣：エド・ミリバンド（下院議員）
エネルギー担当国務大臣：ジョアン・ラドック（下院議員）
国務大臣：フィリップ・ハント
国務次官：デイヴィッド・キッドニー（下院議員）

その他にも複数の国務大臣や次官が省の運営に携わっていました。

組織運営

省の運営は、事務次官であるモイラ・ウォーレス（2008年10月～）が中心となり行われました。また、デイヴィッド・J・C・マッケイ（2009年10月～）が主席科学顧問として省の政策立案に科学的助言を提供しました。

地方分権とエネルギー政策

英国におけるエネルギー政策は、中央政府であるウェストミンスターと、スコットランド、北アイルランド、ウェールズの地方政府との間で権限が分担されています。その分担は、地域ごとの事情や歴史的背景を反映した複雑なものです。

スコットランドでは、電力、石油・ガス、石炭、原子力、省エネルギーといった主要なエネルギー関連事項は、ウェストミンスターではなくスコットランド政府が管轄しています。

北アイルランドでは、原子力を除くエネルギー関連事項を企業・貿易・投資部が総合的に担当しています。

ウェールズでは、ウェールズ分権合意に基づき、特定のエネルギー関連政策分野についてウェールズ議会がウェストミンスターから権限を委譲されています。

このように、英国のエネルギー政策は、中央政府と地方政府がそれぞれ役割を担う複雑なシステムとなっています。それぞれの地域事情を踏まえた政策運営が、英国全体のエネルギー安全保障と持続可能な開発に不可欠です。DECCは、こうした地方分権化の枠組みの中で、英国全体のエネルギー政策と気候変動対策を推進する役割を担っていました。

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