エミリー・カー

エミリー・カー：カナダを代表する芸術家

エミリー・カー（Emily Carr）は、1871年12月13日、カナダのブリティッシュコロンビア州ビクトリアに生まれました。芸術と文学に秀でた彼女は、長い間、カナダの文化シーンで重要な存在として活躍しました。

生い立ちとキャリアの始まり

エミリーは両親を早くに亡くし、1890年にサンフランシスコへ移住。その後、彼女は美術に目覚め、さまざまな学校で技術を磨くことになります。1899年からはイギリスを巡り、ロンドンのウェストミンスター芸術学校や、コーンウォールのスタジオなどで、特に1910年にはパリのアカデミー・コラロッシで学びました。

先住民文化の影響

彼女の作品に大きな影響を与えたのは、ブリティッシュコロンビアやアラスカの自然と先住民文化です。特に、ヌートカ族のコミュニティに近いミッションスクールでの体験が彼女に強いインスピレーションを与えました。1908年にはアラスカに訪れ、現地の多様な文化にも魅了されました。

エミリーはクワクワカワク族やハイダ族、シムシアン族のトーテムポールに強く感銘を受け、彼女自身もその技術や色彩を学びました。彼女は作品を通して、これらの文化を記録し、広めることに尽力しましたが、1913年には財政的な問題から一時的に活動を制限され、再びビクトリアに戻らざるを得ませんでした。

芸術活動の再起

彼女のキャリアの初期には、地元の保守的な芸術環境の中で自らの作品が受け入れられず、陶芸やドック・ブリーディング、さらに下宿の管理人として生計を立てていました。しかし、1920年代にカナダ国立美術館での「カナダ西海岸先住民と現代人の美術展」に招待されて以降、グループ・オブ・セブンとの交流が始まります。

このグループとの出会いが彼女の創作活動に新たな刺激となり、特にローレン・ハリスのサポートが彼女に大きな影響を与えました。彼女の作品が認められるようになり、さらには「現代美術の母」とも称されるようになりました。

文筆活動

彼女はまた、先住民芸術への深い理解を基に、一冊の本をまとめました。その名も『クリー・ウィク Klee Wyck』で、まさに彼女が生きた証ともいえる作品です。この本は1941年にカナダ総督賞を受賞し、以降も自伝的な著作を次々と発表しました。

教育的遺産

エミリー・カーの影響は、彼女の名前を冠した教育機関にも見ることができます。バンクーバーにあるエミリー・カー美術大学やいくつかの学校が彼女の業績を称える形で設立され、彼女の足跡が後世に受け継がれています。

最後の時や遺産

1945年、エミリー・カーはヴィクトリアのロス・ベイ・セメタリーに埋葬されました。その墓碑には「芸術家、そして作家／自然を愛した人物」という言葉が刻まれています。彼女の偉大な作品と影響力は、今でも多くの人々に愛され、評価されています。彼女の人生はカナダの先住民文化や自然との深い絆を示し、アートの可能性を新たな視点で広げた存在でした。

もう一度検索