エライジン酸

エライジン酸は、主に水素添加された植物油中に見られる主要なトランス[[脂肪酸]]の一種です。天然には、ヤギやウシの乳、そして肉にも微量ながら存在しています。具体的には、脂肪酸全体の約0.1%程度がエライジン酸として含まれています。化学的には、エライジン酸はオレイン酸のトランス異性体にあたり、分子構造の違いが、その特性に影響を与えています。

エライジン酸が健康に与える影響として、コレステリルエステル転送タンパク質（CETP）の活性化が挙げられます。CETPは、リポタンパク質間のコレステロールやトリグリセリドの輸送を担うタンパク質であり、エライジン酸はこのCETPを活性化することで、血中の低密度リポタンパク質（LDL）を増加させ、同時に高密度リポタンパク質（HDL）コレステロールを減少させることが示唆されています。

LDLは、一般的に「悪玉コレステロール」と呼ばれ、その血中濃度の上昇は動脈硬化の進行を促進し、心血管疾患のリスクを高めることが知られています。一方、HDLは「善玉コレステロール」と呼ばれ、余分なコレステロールを回収し、動脈硬化を抑制する働きがあります。したがって、エライジン酸によるLDLの増加とHDLの減少は、脂質代謝に悪影響を及ぼし、結果として虚血性心疾患などの疾患リスクを高める可能性があると考えられています。

これらの研究結果は、エライジン酸を多く含む食品の摂取には注意が必要であることを示唆しています。特に、水素添加された植物油を原材料とする加工食品を摂取する際には、その成分表示を確認し、エライジン酸の含有量に留意することが重要です。健康的な食生活を心がけ、バランスの取れた栄養摂取を心がけることが、心血管疾患のリスクを低減するために重要です。

今後の研究では、エライジン酸の摂取量と健康リスクとの関連性をより詳細に解明し、具体的な摂取量に関する指針を示すことが期待されます。

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