エリカ・サルミャーエ

エリカ・サルミャーエ：伝説の女子スプリント選手

エリカ・サルミャーエ（Erika Salumäe）は、1962年6月11日にエストニアのパルヌで生まれた、元女子自転車競技選手です。彼女は、トラックレース、特に個人スプリントにおいて、傑出した才能を発揮し、オリンピックで2つの金メダルを獲得するという偉業を成し遂げました。

輝かしい競技成績

サルミャーエが国際舞台で頭角を現し始めた頃、女子個人スプリントは、アメリカのコニー・パラスケヴィンが第一人者でした。しかし、スピードスケートの短距離選手として1984年サラエボオリンピックで金メダルを獲得した、旧東ドイツのクリスタ・ローテンブルガー（後のクリスタ・ルディンク）が自転車競技にも本格的に参入するようになると、サルミャーエを含めた三強時代が到来しました。

1984年と1986年の世界自転車選手権では、それぞれパラスケヴィンとローテンブルガーに次ぐ2位に甘んじましたが、1987年の世界選手権では、決勝でローテンブルガーを破り、ついに初優勝を飾りました。そして、翌1988年のソウルオリンピックでは、再び三強対決が繰り広げられました。決勝でルディンクとの激戦を制し、オリンピック女子個人スプリントの初代優勝者という栄誉に輝きました。1989年の世界選手権でも優勝を果たしましたが、ソビエト連邦の崩壊という激動の時代を迎え、一時的に現役を退くことになりました。

エストニアが独立を回復した1991年、サルミャーエはエストニア代表として、1992年のバルセロナオリンピックに出場し、個人スプリントで金メダルを獲得。同種目での連覇を達成しました。1996年のアトランタオリンピックにも出場しましたが、6位に終わり、このレースを最後に現役を引退しました。

選手としての功績

サルミャーエは、エストニア最優秀選手賞を9回受賞したほか、200mフライングタイムトライアルで15回の世界最高記録を樹立するなど、数々の輝かしい記録を打ち立てました。彼女の圧倒的なスピードと、最後まで諦めない強い精神力は、多くの人々に感動を与えました。

引退後

現役引退後も、サルミャーエは自転車競技界に貢献し続けました。しかし、2013年11月4日には、腰の手術に必要な医療費を捻出するため、オリンピックで獲得した2つの金メダルを競売に出品し、約5万ポンド（約800万円）で売却しました。この決断は、彼女の苦境を物語るとともに、エストニアにおけるスポーツ選手の地位や、引退後の生活の厳しさを浮き彫りにしました。

エリカ・サルミャーエは、エストニアのスポーツ史に名を刻む、不屈の精神を持った偉大なアスリートです。彼女の功績は、これからも多くの人々に語り継がれることでしょう。

参考情報

エリカ・サルミャーエ - サイクリングアーカイヴス（英語）
エリカ・サルミャーエ - Olympedia（英語）

もう一度検索