エリザベート・ド・ヴァロワ

エリザベート・ド・ヴァロワ、またはエリザベート・ド・フランスは、16世紀のヨーロッパにおいて重要な役割を果たした女性です。彼女は、フランス王アンリ2世とカトリーヌ・ド・メディシスの娘として、1545年にフォンテーヌブロー城で生まれました。幼少期は、後にスコットランド女王となるメアリー1世と共に育てられ、親しい関係を築いたとされています。

エリザベートは、最初はイングランド王エドワード6世との婚約が予定されていましたが、エドワード6世の早すぎる死によって破談となりました。その後、彼女の人生は大きく転換することになります。

14歳になったエリザベートは、カトー・カンブレジ条約という政治的な取り決めによって、スペイン王フェリペ2世と結婚することになりました。フェリペ2世は、当時18歳年上の寡夫であり、元々、エリザベートは彼の息子であるドン・カルロスの婚約者候補でした。この結婚は、政治的な同盟を強化するためのものであり、エリザベートの意思とは関係なく進められました。

1559年、パリのノートルダム大聖堂で、アルバ公爵を代理人とした結婚式が執り行われました。しかし、結婚式の祝宴中に、エリザベートの父であるアンリ2世が馬上槍試合での事故で亡くなるという悲劇が起こりました。この出来事は、フランスとスペイン両国の宮廷に深い衝撃を与えました。

1560年、エリザベートはスペインに到着し、グアダラハラのインファンタド宮殿で正式な結婚式を挙げました。スペインでの生活は、彼女にとって異文化への適応を強いられるものでした。フェリペ2世との結婚生活の中で、彼女は二人の娘を産みました。1566年にイサベル・クララ・エウヘニア、1567年にカタリーナ・ミカエラが誕生しています。イサベルは、エリザベート自身のスペイン語名に由来し、エウヘニアは、エリザベートが安産を祈った聖人の名にちなんで名付けられました。

しかし、エリザベートの健康は徐々に悪化していきました。1568年、彼女は妊娠による体調不良に苦しみ、嘔吐やめまいの症状に悩まされました。同年10月、彼女は死産し、その直後に23歳という若さで急逝しました。彼女は、スペイン王妃でありながら、国王の生母とはならず、エル・エスコリアル修道院内のパンテオン・デ・インファンタスに埋葬されました。

エリザベート・ド・ヴァロワの生涯は、政略結婚によって翻弄されながらも、その短い人生の中で王妃としての役割を全うしようとした女性の物語です。彼女の存在は、フランスとスペインという二つの大国間の複雑な関係を象徴しており、また、16世紀のヨーロッパ社会における女性の立場を浮き彫りにしています。

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