エリン・ブロコビッチ

エリン・ブロコビッチ

エリン・ブロコビッチ（Erin Brockovich, 1960年6月22日生）は、アメリカ合衆国の著名な環境運動家です。特筆すべきは、法曹資格を持たない一般市民でありながら、巨大企業を相手取った環境汚染訴訟において、多額の賠償金和解を実現させたことです。彼女の粘り強い活動と功績は広く知られ、後に映画化もされました。

生い立ちとキャリア

エリン・ブロコビッチは、カンザス州ローレンスにてエレン・パティーとして生まれました。父親は元アメリカンフットボール選手でした。カンザス州立大学を卒業後、一度は就職しますが、ほどなくして職を辞しています。経済的な理由から、生活費を稼ぐために美人コンテストに出場するようになり、1981年にはミス・パシフィック・コーストに選ばれました。しかし、その後のキャリアをカンザスで築くことはせず、1982年にはカリフォルニア州へと移住しました。

私生活では、これまでに3度の結婚と離婚を経験しています。「ブロコビッチ」という姓は、二番目の夫との結婚を通じて名乗るようになったものです。

公害訴訟への関与

エリン・ブロコビッチが環境運動家としてその名を馳せるきっかけとなったのは、カリフォルニア州におけるある重大な公害事件でした。大手電力・ガス会社であるPG&E社が、長期間にわたり、工場の敷地内に高濃度の六価クロム溶液を大量に垂れ流していたのです。この行為により、地域の地下水が深刻なレベルで汚染されました。汚染された水を利用していた周辺住民の間では、癌をはじめとする深刻な健康被害が多発し、事態が明るみに出ました。

エリン・ブロコビッチは、法律事務所で事務員として働きながら、この問題に偶然関わることになります。彼女は被害住民の声に耳を傾け、企業による環境汚染と健康被害の因果関係を証明するために奔走しました。正式な法律家ではないにもかかわらず、並外れた情熱と粘り強さをもって調査を進め、住民を組織しました。そして、PG&E社を相手取った集団訴訟を提起するに至ります。この訴訟は、長期にわたる法廷闘争の末、1996年に企業側が3億3300万ドルという巨額の和解金を支払うことで決着しました。これは、当時の公害訴訟における和解金額としては異例の高さであり、その後の環境問題に対する企業の責任追及において、大きな先例の一つとなりました。

映画化とその影響

エリン・ブロコビッチが主導したこの歴史的な訴訟事件は、社会的に大きな注目を集め、2000年にはハリウッドで映画化されました。スティーヴン・ソダーバーグが監督を務めたこの映画『エリン・ブロコビッチ』では、主演をジュリア・ロバーツが演じました。ジュリア・ロバーツはこの役で高い評価を受け、アカデミー主演女優賞、ゴールデングローブ賞女優賞、英国アカデミー賞女優賞といった数々の主要な映画賞を受賞しました。映画はエリン・ブロコビッチの不屈の精神と、巨大企業に立ち向かう一般市民の力を描き、世界中で多くの人々に感銘を与えました。また、エリン・ブロコビッチ本人も、映画の中でウェイトレス役としてカメオ出演を果たしています。

映画の成功により、エリン・ブロコビッチの名はさらに広く知られることとなり、彼女はその後も環境問題や市民運動に関与し続けています。法律の専門教育を受けていない人物が、情熱と正義感に基づいて巨大な権力に立ち向かい、人々の権利を守ったという彼女の物語は、今日でも多くの人々に勇気を与えています。

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