エルクロス

エルクロス（LCROSS）とは

エルクロス（Lunar Crater Observation and Sensing Satellite）は、NASAが打ち上げた無人の月探査機です。このミッションの主な目的は、月の極地方に存在する永久影のクレーターに氷が存在するかどうかを確認することにあります。2009年、エルクロスは月の南極にあるカベウスクレーターで水の発見に成功し、これが将来的な月面基地建設の可能性に影響を与えることが期待されました。

プロジェクトの背景

エルクロスは、アメリカ合衆国の10年以上ぶりの月ミッションとして、ルナー・リコネサンス・オービター（LRO）と共に2009年6月18日に打ち上げられました。このミッションは、NASAの月帰還計画の先駆けとなるものであり、アメリカ政府が月の植民地化に向けた決定を行う際の重要なデータを提供することが期待されました。

エルクロスは、カベウスCクレーターにセントールロケットを衝突させ、その際に発生する塵を観測、データを収集して地球に送信する設計となっています。エルクロスの質量は2249kgで、衝突時には時速10000kmの速さが予定されましたが、最終的にはこれを超える速度で月面に衝突しました。

ミッションの経緯

ロケットはフロリダ州ケープカナベラル空軍基地からアトラスVロケットを使用して打ち上げられましたが、8月22日には燃料の半分を失い、ミッションの進行に影響を及ぼしました。それでも、2009年10月9日、セントールは月面に衝突、エルクロスはその4分後に続いて衝突しました。これにより、約350トン以上の塵が宇宙空間に舞い上がることが予測されました。

衝突と観測

エルクロスは、事前の計画に従い、月に向かって進行していましたが、実際の衝突によって発生した塵は、当初の期待とは異なり、観測されませんでした。この衝突の影響を評価するために、プロジェクトマネージャーはシミュレーションが過大評価されていたと示唆しています。結果的に、衝突による塵の観測は、地上の望遠鏡でも難しい状況となりました。

水の発見とその意義

2009年11月、NASAはエルクロスの衝突によって月に水の存在を確認する証拠を発見したと発表しました。水の存在は、将来的な月面基地の設計や持続可能性に関する重要なデータとなります。ロバート・ズブリンによれば、月のレゴリス中には約100kgの水が存在すると推測されていますが、これは乾燥地帯の土壌に含まれる水分よりもずっと少ないとされ、火星に比べると遥かに少ないことが語られています。

宇宙船の設計

エルクロスの設計には、多数の新技術が組み込まれています。ペイロードは9つの観測装置からなり、衝突後の塵や温度の観測が可能なように作られています。開発はNASAのエイムズ研究センターとノースロップ・グラマンが行い、様々な既存部品を活用した結果、コストを抑えつつもパフォーマンスを最大限に引き出すことに成功しました。

まとめ

エルクロスのミッションは、月の極地方の水の存在を確認する重要な研究成果をもたらしました。これにより、将来的な月探査や宇宙移住に向けた議論が進むことが期待されています。宇宙探査におけるこの成果は、科学技術の進展とともに宇宙の理解が深まる一助となるでしょう。

もう一度検索