エルンスト・フォン・エスターライヒ (1553-1595)

エルンスト3世大公は、1553年、神聖ローマ皇帝マクシミリアン2世と皇后マリア・デ・アウストリアの間に生まれました。兄ルドルフ2世の弟であり、ルドルフ2世が独身だったことから、事実上の後継者として期待されていました。ルドルフ2世にとって、エルンスト3世大公は家族の中でも数少ない信頼できる相談相手でもありました。

1572年、ポーランド王ジグムント2世の崩御に伴い、ポーランド王位継承の自由選挙に名乗りを上げましたが、フランスが推すアンジュー公アンリ（後のアンリ3世）に敗れました。

その後、エルンスト3世大公は、下オーストリア総督、内オーストリア総督を歴任しました。1590年には、叔父である内オーストリア州侯カールが亡くなると、その長男で幼少だったフェルディナント（後の皇帝フェルディナント2世）の後見人となり、州政を代行しました。しかし、1592年にはハンガリーにおいてオスマン帝国軍との戦いで敗北を喫しました。

1594年、母方の伯父にあたるスペイン王フェリペ2世によってスペイン領ネーデルラント総督に任命され、ブリュッセルに入りました。フェリペ2世と教皇シクストゥス5世は、エルンスト3世大公にカトリックの対抗宗教改革の推進を期待していましたが、翌1595年にブリュッセルで急逝したため、政治的な功績を残すことはありませんでした。

しかしながら、エルンスト3世大公のブリュッセル滞在は、ハプスブルク家の美術品蒐集の歴史において重要な意味を持ちました。彼はネーデルラント滞在中にピーテル・ブリューゲルの作品を知り、収集を開始しました。さらに、兄のルドルフ2世にもブリューゲル作品の収集を勧めたとされています。エルンスト3世大公とルドルフ2世によるブリューゲル作品収集は、ウィーン美術史美術館の貴重なブリューゲル・コレクションの礎を築いたのです。

エルンスト3世大公の生涯は、王位継承への挑戦、政治的責任、軍事的な挫折、そして重要な美術品収集という、様々な側面から見て取ることができます。彼の急逝は、ハプスブルク家やヨーロッパの政治情勢に影響を与えただけでなく、美術史にも足跡を残すこととなりました。彼の短いながらも多忙な人生は、当時のヨーロッパの歴史を理解する上で重要な人物像として捉えることができます。

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