エル・エスコリアル

エル・エスコリアルは、スペインのマドリード州に位置する自治体であり、クエンカ・デル・グアダラーマ郡に属しています。グアダラーマ山脈の南麓、首都マドリードから北西へ約46kmの場所に位置し、隣接するサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルとは区別するため、地元では「エル・エスコリアル・デ・アバッホ」と呼ばれています。一方、サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルは「エル・エスコリアル・デ・アリーバ」と呼ばれることが多いです。自治体内にはグアダラーマ川の支流であるアウレンシア川が流れており、豊かな自然環境を形成しています。

地理的には、北はサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル、西はロブレード・デ・チャベーラとサルサレッホ、南西はナバルガメージャ、南はバルデモリージョとコルメナレッホ、東はガラパガールの各自治体と隣接しています。これらの自治体は、歴史的にも密接な関係を持っており、エル・エスコリアルの発展に影響を与えてきました。

歴史を振り返ると、16世紀に自治体内にエル・エスコリアル修道院が建設されましたが、18世紀にはその周辺地域が独立し、サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルという自治体として分離しました。そのため、エル・エスコリアル修道院はサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル修道院とも呼ばれています。2006年には、エル・エスコリアルはサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルなど周辺の自治体とともに、歴史的領域・場所として文化財地区に指定されました。これらの地域は、16世紀に王室御用地として定められた王室および修道院の直轄領であり、現在でも「サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル王室御用地」または「サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルおよびエル・エスコリアル王室御用地」として知られています。

特に注目すべきは、自治体内の史跡であるカシータ・デル・プリンシペ（王子の別荘）です。この別荘は、1984年にユネスコの世界遺産に登録された修道院と王室御用地の一部を構成しており、歴史的、文化的価値が非常に高いものとなっています。

エル・エスコリアルという名称の語源については、確固たる定説はありません。有力な説としては、「escoria」（冶金製造の残りかす）から派生したとするものがありますが、この地にそのような場所があった証拠は確認されていません。他に、「aesculus」（栗の木）や「casiri」（岩の多い）など、地域の特性や自然環境に関連づける説も存在します。また、新説として、湿気の多い森に由来する「oscuridad」（暗さ）との関連性も指摘されています。

政治面では、自治体首長はマドリード国民党のアントーニオ・ビセンテ・ルビオ氏が務めています。自治体評議員は、マドリード国民党が多数を占め、その他にマドリード社会党、MA、統一左翼＝緑の党、ACCION PLURALの各党派が議席を有しています。司法行政においては、エル・エスコリアルはナバルカルネーロ司法管轄区に属しています。

この地には、フェリーペ2世に関連する歴史的な史跡が数多く存在し、16世紀後半に王室御用地が設けられたことがその背景にあります。これらの史跡は、現在のエル・エスコリアル、サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル、サルサレッホ、サンタ・マリーア・デ・ラ・アラメーダの各自治体にまたがる地域に分布し、2006年にマドリード州法により文化財として保護されています。

エル・エスコリアルには、新古典様式のカシータ・デル・プリンシペや、エレーラ様式のサン・ベルナベ教会、ラ・グランヒージャ・デ・ラ・フレスネダなど、様々な建築様式の建物が残されています。さらに、プレスタード修道院や美しい庭園、手つかずの自然も存在し、訪れる人々を魅了しています。

エル・エスコリアルは、その歴史、文化、自然が調和した、魅力あふれる場所と言えるでしょう。

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