エル・トポ

『エル・トポ』は、1970年にメキシコで製作されたアレハンドロ・ホドロフスキー監督・主演による異色の西部劇であり、後にカルト映画の代表作として世界に知られることになります。タイトルはスペイン語で「モグラ」を意味し、主人公の旅が地中深く潜るような内面への探求であることを暗示しています。

物語は、ガンマンである主人公エルトポが、息子を伴って荒野を旅するところから始まります。彼は虐殺された町の惨状を目の当たりにし、犯人である盗賊一味を追います。修道院に潜伏していた彼らを激しい銃撃戦の末に制圧し、盗賊の首領との一対一の決闘に勝利を収めます。

勝利の後、エルトポはかつて首領の慰み者であった女性と共に新たな旅に出ることを選び、息子を置き去りにします。この女性との蜜月は束の間、彼女はエルトポに愛の証明として砂漠にいる四人の「マスターガンマン」を倒すよう求めます。かくして、エルトポの最強のガンマンを巡る探求の旅が始まります。

最初の達人は、盲目のヨガ行者で、無の境地に達しており、弾丸すら受け付けない体を持つとされます。エルトポは正攻法では勝てないと悟り、卑劣な罠を仕掛けて勝利を得ます。続く二番目の達人は、究極の集中力を持つ速射の達人ですが、極度のマザコンでした。エルトポは彼の母親を傷つけることで動揺を誘い、背後から射殺するという非道な手段を用います。

旅の途中、エルトポと女性の間には新たな女性が加わり、奇妙な三角関係が生まれます。エルトポが卑怯な手段を重ねるにつれて、彼の心には疑念と葛藤が芽生え始めます。三人目の達人は、完璧な技量を持ち、心を読む能力を持つガンマンです。彼は常に一発の弾丸で相手を仕留めますが、エルトポは胸に鉄板を仕込むという策で彼を打ち破ります。この時点でエルトポの旅の目的や手段への疑問は深まります。

最後の四人目の達人は、もはやガンマンではなく、自然と一体化した仙人のような存在でした。彼は銃を使わずともエルトポの攻撃を容易にかわし、銃弾を虫取り網で打ち返すという超常的な能力を見せます。彼を倒しても得るものは何もないと語る達人は、命の価値や決闘の無意味さをエルトポに悟らせるため、エルトポの銃で自らの命を絶ちます。この衝撃的な出来事により、エルトポは自らの破壊してきたものの重圧に打ちひしがれ、銃を捨て、神にも恋人にも見放されたと感じ、深い眠りにつきます。

長い眠りから覚めたエルトポは、社会から隔絶された洞窟で暮らす異形の者たちによって「神」として崇められている自分に気づきます。生まれ変わった彼は、この見捨てられた人々を救うため、洞窟から外の世界へ通じるトンネルを掘ることを決意します。聖者のような風貌となったエルトポは、世話をしてくれた女性と共に下界の町へ降り、退廃と欺瞞に満ちた世界で芸を披露して資金を集めます。

下界での活動を通じて、エルトポはその女性と深い関係になり、結婚を誓います。しかし、教会で結婚式を挙げようとした時、彼はかつて置き去りにした息子と再会します。息子は父への復讐を誓っていますが、エルトポはトンネル完成まで待つように懇願します。息子は監視役として父のトンネル掘削に同行し、やがて女性がエルトポの子を妊娠し、作業が困難になると資金集めを手伝うようになります。

トンネルが完成したとき、息子は「師を殺せない」と父への復讐を断念します。エルトポはもはやかつての冷酷なガンマンではなかったのです。しかし、トンネルを通って外の世界へ出た異形の者たちは、下界の社会に拒絶され、虐殺されてしまいます。この悲劇に激怒したエルトポは、町の人々を皆殺しにしますが、自身も無数の銃弾を受けて倒れます。そして、自らの命を燃やし尽くすように焼身自殺を遂げます。

エルトポの死後、息子と、彼の子を産み落とした女性、そして赤ん坊だけが残されます。彼らの旅は続いていくことを示唆し、物語はエルトポの墓に無数のミツバチが集まり巣を作る象徴的な光景で幕を閉じます。『エル・トポ』は、その暴力的な描写、宗教的・哲学的な象徴、そして独特な映像美によって、観る者に強烈な印象を与える作品であり、ミッドナイトムービーとしての地位を確立しています。

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