エル・マリアッチ

エル・マリアッチ（El Mariachi）

1993年にアメリカ合衆国とメキシコが合作して製作されたアクション映画であり、鬼才ロバート・ロドリゲス監督が手掛けた「マリアッチ三部作」の幕開けを飾る一作です。

特筆すべきは、その驚異的な低予算――わずか7000ドル――で生み出されたという事実です。限られた資金の中で製作されたにも関わらず、独創的な映像センスとスリリングな展開が高く評価され、当時ほとんど知られていなかったロドリゲス監督の名を一躍世界に知らしめるきっかけとなりました。本作の成功がなければ、後の『デスペラード』や『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』といった続編、そしてロドリゲス監督の輝かしいキャリアは生まれなかったかもしれません。

概要

本作は、その革新的な手法と完成度の高さから、自主製作映画の可能性を示す金字塔として語り継がれています。監督自身が脚本、製作、編集、撮影などを兼任し、友人や家族の協力を得ながらゲリラ的に撮影されました。

本作の成功を受け、後に製作された続編『デスペラード』では、主人公マリアッチ役をアントニオ・バンデラスが引き継ぎ、より大規模な予算で制作されました。しかし、本作でマリアッチを演じたカルロス・ガラルドーも降板したわけではなく、物語に登場するマリアッチの仲間、二丁拳銃を操るガンマンのカンパとして再び姿を見せています。これは、シリーズを通してのユニークなキャスティングの継続性としてファンに親しまれています。

ストーリー

物語の舞台は、メキシコ国境近くの寂れた田舎町、アクーナ。刑務所から脱獄した悪名高いギャングのボス、アズールが、かつて自分を裏切り分け前を独占したモーリシオへの復讐に乗り出す場面から幕を開けます。アズールは全身黒い衣装をまとい、武器であるマシンガンを黒いギターケースに隠し持ち、モーリシオの手下を次々と血祭りに上げていきます。

手下を皆殺しにされたことに激怒したモーリシオは、町中に潜伏しているアズールを捜し出すよう配下に厳命します。その特徴は「黒いギターケースを持った黒服の男」です。

時を同じくして、一人の若いマリアッチ（メキシコの流しの音楽家）が、仕事を探してこの町にやってきます。彼は身なりこそ質素ですが、ミュージシャンとしての商売道具であるギターを黒いギターケースに入れて持ち歩き、たまたま黒い服を着ていました。何も知らないマリアッチはホテルにチェックインしますが、彼の外見がアズールの特徴と完全に一致していたため、ホテルのフロント係は彼をアズールだと誤認し、モーリシオに密告してしまいます。

かくして、無実のマリアッチは、突然現れたモーリシオの殺し屋たちに命を狙われる羽目に。彼は必死に応戦し、ホテルから間一髪逃げ出すことに成功しますが、その過程で図らずも4人の殺し屋を返り討ちにしてしまいます。

行くあてもなく追われる身となったマリアッチは、立ち寄ったバーで美しい経営者であるドミノにかくまわれます。命の恩人であり、また共通の孤独を抱える二人は次第に心を通わせていきます。しかし、運命の皮肉か、ドミノがモーリシオの愛人の一人であることが明らかになり、マリアッチはさらに複雑で危険な状況へと追い込まれていくのでした。無関係だったはずのマリアッチの人生は、否応なしにギャングの抗争へと巻き込まれていきます。

キャスト

エル・マリアッチ - カルロス・ガラルドー
ドミノ - コンスエロ・ゴメス
ビゴトン - ジェイム・デ・ホヨス
モーリシオ - ピーター・マルカルド
アズール - レイノル・マルティネス

スタッフ

監督：ロバート・ロドリゲス
製作：ロバート・ロドリゲス、カルロス・ガラルドー
脚本：ロバート・ロドリゲス

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