エレクトリック (キング・クリムゾンのアルバム)

エレクトリック（EleKtrik）

キング・クリムゾンが2003年に発表したライブアルバム、『エレクトリック』（EleKtrik）は、その活動時期における彼らのパフォーマンスを捉えた重要な音源です。この作品には、2003年に行われた日本公演の中から、特に印象的な一夜の記録が収められています。

収録公演の詳細

本作に収録されているのは、2003年4月16日に東京都内の会場で開催されたコンサートの模様です。この時期のキング・クリムゾンは、スタジオアルバム『ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ』（The Power To Believe）をリリースし、精力的にライブ活動を行っていました。この東京公演も、その一連のツアーの中で実現したものです。

CD化における編集と制約

ライブ全体の演奏時間を1枚のCDに収めるためには、残念ながら幾つかの編集や取捨選択が必要となりました。公演は長尺な演奏を含んでいましたが、アルバムとしてリリースするにあたり、以下の点が変更されています。

「イントロダクトリー・サウンドスケープ」（Introductory Soundscape）の短縮: 実際のライブでは20分を超える壮大なオープニング演奏でしたが、アルバム版ではおよそ5分程度に編集されています。
楽曲のカット: 当日演奏された楽曲の中から、「ザ・コンストラクション・オブ・ライト」（The ConstruKction of Light）と「ザ・デセプション・オブ・ザ・スラッシュ」（The Deception of the Thrush）の2曲は、本アルバムには収録されていません。

これらの編集は、CDというメディアの物理的な制約を考慮した結果であり、ライブの全貌をそのまま記録したものではありませんが、収録された楽曲からは、この時期のクリムゾンの緊密で実験的なアンサンブルを感じ取ることができます。

収録楽曲

アルバム『エレクトリック』には、前述の編集を経て以下の12曲が収められています。リストは、当時の彼らの最新作からの楽曲と、過去の重要なレパートリーを織り交ぜたセットリストを反映しています。

1. イントロダクトリー・サウンドスケープ (Introductory Soundscape)
2. ザ・パワー・トゥ・ビリーヴⅠ：アカペラ (The Power To Believe I:(A Cappella))
3. レヴェル５ (Level Five)
4. プロザック・ブルース (ProzaKc Blues)
5. エレクトリック (EleKtriK)
6. ハッピー･ウィズ･ホワット･ユー･ハフ・トゥ・ビー・ハッピー・ウィズ (Happy With What You Have To Be Happy With)
7. ワン・タイム (One Time)
8. ファクツ・オブ・ライフ (Facts Of Life)
9. ザ・パワー・トゥ・ビリーヴⅡ (The Power To Believe II(Power Circle))
10. デンジャラス・カーヴス (Dangerous Curves)
11. 太陽と戦慄パートⅣ (Larks' Tongues In Aspic:Part IV)
12. ザ･ワールズ･マイ･オイスター・スープ・キッチン・フロア・ワックス・ミュージアム (The World's My Oyster Soup Kitchen Floor Wax Museum)

特に「レベル５」やアルバムタイトルにもなった「エレクトリック」などは、当時のクリムゾンのサウンドを特徴づける楽曲と言えるでしょう。また、「太陽と戦慄パートⅣ」のように、往年の名曲がどのように再構築されて演奏されたかを知ることもできます。

映像作品との関係

この2003年4月16日の東京公演は、音源だけでなく、映像としても記録されています。同公演の映像は、後に『アイズ・ワイド・オープン/Eyes Wide Open』というタイトルのDVD作品としてリリースされました。このDVDは、CD版には収録されなかった楽曲や、メンバーの演奏している姿、ステージ上のインタラクションなどを視覚的に楽しむことができるため、アルバム『エレクトリック』と併せて鑑賞することで、この日のライブ体験をより立体的に理解することが可能です。

『エレクトリック』は、収録時間の制約からライブのすべてを網羅しているわけではありませんが、2003年のキング・クリムゾンが日本でどのようなパフォーマンスを繰り広げていたのかを知る上で、非常に価値のあるライブドキュメントです。このアルバムを通じて、変幻自在な彼らの音楽の一端に触れることができるでしょう。

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