エレクトリックチェロ

エレクトリックチェロ

エレクトリックチェロ（Electric cello）は、伝統的なアコースティックチェロとは異なる方法で音を作り出す電気楽器です。弦が振動した際に発生する微細な動きや音を、ピックアップと呼ばれる変換器によって電気信号に変換し、その信号をアンプなどの音響機器で増幅することで、可聴音として出力します。アコースティックチェロが木製の大きなボディ（共鳴胴）全体を振動させて音を響かせるのに対し、エレクトリックチェロは共鳴胴を持たないか、あるいは持っていてもそれは装飾的な意味合いが強く、音量や音色は主に電気的な増幅システムによって決定されます。

他の電気弦楽器、例えばエレクトリックバイオリンなどの分野では、アコースティック楽器と同様の共鳴胴を備えつつ電気的な増幅も可能なモデルを「エレクトリック・アコースティック」、共鳴胴を持たない完全に電気設計のモデルを「エレクトリック」と呼び分けることが一般的です。しかし、チェロの場合、後者のタイプであっても広くエレクトリックチェロという名称が用いられる傾向にあります。この呼称の慣習は、アコースティックチェロに比べてエレクトリックチェロの歴史が比較的浅く、まだ楽器として広く普及している段階ではないことに起因すると考えられています。

構造

エレクトリックチェロの構造上の最大の特徴は、音響的な共鳴胴を必ずしも必要としない点にあります。これにより、楽器本体のデザインに非常に高い自由度がもたらされており、多様な外観を持つモデルが存在します。

胴体（ボディ）

楽器の胴体部分は、音響増幅の機能を持たないため、その形状はモデルによって大きく異なります。古典的なアコースティックチェロの美しいシルエットを小さく模倣したものから、演奏に必要な最小限のフレームやサポートだけを残し、まるでアコースティックチェロのボディを大胆に削ぎ落としたかのようなユニークなデザインのもの、さらに極限までシンプルさを追求した棒状のモデルまで、そのバリエーションは豊富です。しかし、こうしたデザインの多様性がある一方で、多くのエレクトリックチェロは、奏者がアコースティックチェロを演奏する際と同じように楽器を体に構え、自然な演奏ポジションを維持できるように設計されています。この目的のために、アコースティックチェロの胴体のアウトラインを模したフレームが取り付けられていたり、楽器が膝や胸に当たるべき位置にサポートパーツが設けられていたりします。こうしたサポート構造を持たない、非常にミニマルなデザインのモデルの場合、楽器を安定して保持するために専用のスタンドに立てて演奏するか、あるいはストラップを用いて楽器を体にかけて演奏するスタイルが取られます。胴体の自由なデザインは、見た目の個性だけでなく、楽器の運搬や保管の容易さ、そして演奏時のハウリング抑制といった実用的な利点にもつながっています。

ピックアップ

弦の振動や楽器本体の響きを電気信号に変換するピックアップとしては、ピエゾ方式が最も一般的です。ピエゾピックアップは、物理的な振動を直接電気信号に変換するため、弦の振動やボディ材の響きを忠実に拾いやすいという特徴があります。その取り付け位置や方法は様々で、チェロの駒（ブリッジ）の表面に直接接着するもの、駒自体に加工を施して内部に埋め込むもの、あるいは駒と楽器本体の表面の間に薄いピックアップ素子を挟み込むように設置するものなどがあります。一方、エレキギターなどで広く用いられている、磁界の変化を利用して弦の振動を検出するマグネティックピックアップがエレクトリックチェロに採用される例は、現状では非常に少ないです。ピックアップの種類や取り付け位置は、楽器が拾い上げる音の特性や、最終的にアンプから出力される音色に大きな影響を与える要素となります。

弦

エレクトリックチェロに使用される弦は、特別な専用品が製造されているわけではなく、通常、アコースティックチェロのために作られた標準的な弦をそのまま使用するのが一般的です。このため、奏者はアコースティックチェロからエレクトリックチェロに持ち替える際にも、弦の感触や応答性の面で大きな違和感を感じにくく、また、弦の交換が必要になった場合もアコースティック用弦の入手が容易であるという利点があります。アコースティック用弦の多様な種類の中から、好みの音色や演奏感の弦を選ぶことができます。

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