エロエロ草紙

『エロエロ草紙』の歴史と意義

『エロエロ草紙』は、日本の作家酒井潔による随筆やイラストの作品集です。本書は、昭和5年（1930年）に竹酔書房から出版される予定でしたが、事前の検閲により「公序良俗を乱す」と判断され、発売が中止されました。

検閲と発禁

本書のタイトルやテーマは当時の価値観において刺激的とされ、その表現が問題視されました。著名な研究者の永井良和によると、特に表紙と扉絵の表現が強すぎたため、検閲官に不快感を与えたとされています。復刻版を手がけたデザイナーの渡辺将史も、扉絵に仕掛けが施されており、見た目に惹かれるものであることを指摘しました。

このような背景から、本書は発禁処分を受けてしまいますが、その後も翻訳本や他の作品を通じて、酒井の創作活動は続きました。

デジタル公開

約80年後の2012年には、国立国会図書館によって本書が電子化され、インターネット上で公開されました。このデジタル化は注目を集め、特にアクセス数が5カ月連続で1位を記録するほどの反響を呼びました。さらに、2013年には文化庁の電子書籍化プロジェクトに選ばれ、無料配信も行われました。

このプロジェクトの中で『エロエロ草紙』は優れた資料であることが再評価され、数多くのダウンロードを記録しました。

復刻版の登場

復刻版は2013年6月に彩流社から発売されました。この復刻版の担当者は、本書の公開状況を知り、本書が発禁になっていることに商機を見出しました。従来は白黒印刷しか見られなかったイラストが、復刻版では原書のカラー印刷を再現しました。

復刻に向けての過程は苦労の連続でしたが、著者の情熱により実現しました。特に編集者Aは、国立国会図書館に原本を確認する機会を得ることで、本書のカラーイラストの価値を理解したのです。

内容と評価

本作品の内容は、エッセイとイラスト、写真などから成り立っており、雑誌のような構成をしています。作中には女性のイラストや写真が多数あり、当時のセンスを反映しています。現代では、「いかがわしい」というよりも「微笑ましい」と捉えられることが多く、著者自身も本書を「上品なエロと、朗らかなナンセンス」と評しています。

本書は、当時の文化や社会風俗を知るための重要な資料として位置づけられており、昭和初期の検閲や出版事情を知るための貴重な記録となっています。

結論

『エロエロ草紙』は、その刺激的なタイトルや独特のテーマによって、当時の社会に衝撃を与えましたが、時を経るごとに一層新たな視点での評価を得ています。現代における復刻やデジタル化を通じて、本書の魅力を再発見する機会が増えていることは、非常に意義深いことと言えるでしょう。

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