エンテベ空港の7日間

2018年公開のイギリス・アメリカ合作映画『エンテベ空港の7日間』は、1976年にウガンダのエンテベ国際空港で起きたハイジャック事件と、イスラエル軍によるその後の奇襲作戦を題材にしたスリラー作品です。監督はジョゼ・パジーリャ、主演はダニエル・ブリュールとロザムンド・パイクという豪華キャストを迎え、歴史的事実をベースにしながらも、人間ドラマに焦点を当てた重厚なストーリーが展開されます。

物語は、西ドイツの革命組織に所属する2人のテロリスト、ヴィルフリートとブリギッテが、パレスチナの協力者と共にエールフランス139便をハイジャックするところから始まります。彼らは多数のイスラエル人を乗せた航空機を乗っ取り、ウガンダのエンテベ国際空港に不時着させます。空港はたちまち緊迫の空気に包まれ、人質たちは恐怖に怯えます。

ハイジャック犯であるヴィルフリートは、人質たちと交流する中で、次第に彼らへの感情を抱き始めます。しかし、仲間であり親友を失った経験を持つブリギッテは、冷酷な態度を崩しません。任務への強い使命感と、過去のトラウマが彼女の行動を突き動かしているのです。

一方、イスラエル政府は、人質救出作戦を密かに計画していました。イスラエル国防相シモン・ペレスや首相イツハク・ラビンらの指導の下、精鋭部隊による大胆な作戦が実行に移されます。この作戦には、のちに殉職するヨナタン・ネタニヤフ指揮官も関わっており、彼の勇猛果敢な行動も描かれていますが、本作では過去の映画化作品とは異なり、英雄としてだけでなく、作戦における彼の役割や葛藤もリアルに表現されています。

映画では、ハイジャック犯と人質、そしてイスラエル軍のそれぞれの視点が丁寧に描かれ、事件の複雑さと多角的な側面が浮き彫りにされています。ハイジャック犯の動機、人質たちの恐怖と希望、そしてイスラエル軍の作戦立案と実行における苦悩などが、緊迫感溢れるシーンと静かな場面の対比によって鮮やかに表現されています。

『エンテベ空港の7日間』は、単なるアクション映画ではなく、歴史的事件の裏側にある人間模様を深く掘り下げた作品です。歴史家のソウル・デヴィッドの著書『Operation Thunderbolt: Flight 139 and the Raid on Entebbe Airport』を参考に制作された脚本は、事件の背景や登場人物たちの心理を綿密に描き出しており、高い評価を得ています。

しかし、Rotten Tomatoesなどの批評サイトでは、作品全体の評価は賛否両論となっています。興味深いストーリーにもかかわらず、ドラマとしてやや退屈な展開になってしまった点を指摘する声も多く聞かれます。

マルタ島での撮影中に、偶然にも実際のハイジャック事件が発生するというハプニングに見舞われたというエピソードも、本作の制作過程における興味深い逸話と言えるでしょう。

『エンテベ空港の7日間』は、エンテベ空港奇襲作戦を題材にした数多くの映画作品の中でも、特に人間ドラマに重きを置いた、独特な視点からのアプローチが特徴の作品です。歴史的事件に興味のある方、そして人間ドラマを深く味わいたい方にとって、必見の一本と言えるでしょう。

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