エントモプター

エントモプターとは

エントモプター（Entomopter）は、昆虫の羽ばたきによる飛行の原理を応用した航空機の一種です。この言葉は、「昆虫」を意味する「entomo」と「翼」を表す「pteron」から派生しています。エントモプターは、オーニソプターと呼ばれるデバイス群に属し、羽ばたき翼によって飛行することを目的としています。

地球上のエントモプター

地球上で開発されたエントモプターは、ジョージア工科大学（GTRI）やケンブリッジ大学などの研究機関によって製作され、特にロバート・マイケルソン教授のチームが活躍しています。このロボットは、15〜18センチメートルの翼幅を持つマルチモードの昆虫のようなデザインで、飛行と這う動作が可能です。前後に配置された2組の翼は、効果的に共振し、安定した羽ばたきを確保しています。このデザインにより、飛行だけでなく完全な制御が実現されています。羽ばたきの速度は35ヘルツと一定で、この生物模倣型のロボットはマイクロ・エア・ビークル（MAV）に分類されます。

総離陸重量は50グラムほどで、約10グラムのペイロードを運ぶことができます。主な用途は人が入りにくいエリアでの内部偵察や制限された環境での操作です。

推進システム

エントモプターは、往復化学筋肉（RCM）によって駆動される羽ばたき翼を持ち、自律的に羽ばたくことができます。この技術により、発火源や酸素の供給を必要とせず化学エネルギーからモーションを生み出すことが可能です。また、RCMは電力を発生させ、翼の揚力と推力を強化し、操縦に必要なピッチやロールなどの制御を実現します。

さらに、このロボットは無酸素環境でも機能するため、火星などの過酷な環境での運用が期待されています。RCM内で生成された廃ガスは障害物回避や高度測定に役立ち、またナビゲーションシステムにも利用されています。

火星でのエントモプター

火星の大気は非常に希薄で、従来の固定翼の探査機が250マイル毎時以上の速度で飛ぶ必要があります。これにより、安全に着陸することが難しく、サンプル採取も不可能になることが多いです。その点、エントモプターは羽ばたきによって高い揚力を得ることができ、地面に対してゆっくりと移動することができます。

オハイオ航空宇宙研究所による研究によれば、このエントモプターの概念は、ナサの先端概念研究所（NIAC）の支援を受けて、火星ミッションの一環として検討されています。火星でのエントモプターは、1メートルの翼を持つ大型バージョンも考えられており、重力が地球の37%であるため、サイズ相対的に軽くすることも可能です。これにより、サンプルの採取や着陸、通信など柔軟な操作が実現できます。

最近、火星における昆虫型の飛行を持続的に研究するための新たなプロジェクト「Marsbee」が立ち上げられました。

特許と参考文献

エントモプターには、いくつかの特許が付与されています。特に、2000年に取得された特許第6,082,671号と、2002年に取得された特許第6,446,909号が重要です。これらの特許は、エントモプターの設計や特定の機能に関する技術的側面をカバーしています。さらに、エントモプターに関するさまざまな研究報告やプロジェクトが進行中であり、今後の展開が期待されています。

エントモプターは、昆虫の飛行メカニズムをモデルにした新しい技術であり、未来の宇宙探査における新しい可能性を魅力的に示しています。

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