エントレブッハー・キャトル・ドッグ

エントレブッハー・キャトル・ドッグ（Entlebuche Cattle Dog）

スイス中部、エントレブッフ地方を流れる川にその名を由来するエントレブッハー・キャトル・ドッグは、スイス原産の牧牛犬（キャトル・ハーダー）です。同国原産のバーニーズ・マウンテン・ドッグ、グレーター・スイス・マウンテン・ドッグ、アッペンツェラー・キャトル・ドッグとは近縁種にあたり、別名としてはエントレブッフ・キャトル・ドッグとも呼ばれます。

歴史

本犬種の正確な起源は明らかではありませんが、1800年代には既に牧牛犬として活躍していた古い歴史を持つ犬種です。より小型で扱いやすい牧牛犬を求めて作出が進められたと考えられており、近縁種よりサイズは小さくなりましたが、家畜を扱うための豊富なスタミナと運動能力は維持されました。

長きにわたり、エントレブッハー・キャトル・ドッグは牧牛や牧山羊の誘導・管理に使われました。家畜を季節ごとに適地へ移動させたり、売買のために市場へ連れて行ったりする作業で、彼らの機敏さと賢さが重要な役割を果たしました。

しかし、20世紀に入り農業の機械化が進むと犬に頼る仕事が減少し、頭数は激減、一時は絶滅の危機に瀕しました。

この危機を救ったのは、スイス国内で家庭犬として飼育されるようになった個体の存在です。彼らが持つ明るく友好的な性格が注目され、近縁種と共にヨーロッパ各地に知られるようになります。かつてのワーキングドッグはドッグショーの舞台にも登場し、その存在が広く認識されました。こうした関心の高まりが犬種の存続に繋がり、国際畜犬連盟（FCI）にも公認されることとなりました。

FCI公認後、各犬種の保存・普及を目的としたクラブが設立され、計画的なブリーディングが進められました。現在では、ヨーロッパのみならず世界中で、ワーキングドッグ、家庭犬、ショードッグとして飼育されています。バーニーズ・マウンテン・ドッグほどの知名度はありませんが、愛好家は増加傾向にあり、着実に人気を高めています。

特徴

エントレブッハー・キャトル・ドッグは、親戚犬種、特にバーニーズ・マウンテン・ドッグと比較して小型で、相対的に脚が短いのが特徴です。その体格からは想像できないほど俊敏で、素早く動き回ることができます。

外見上の特徴としては、顔のやや前方に位置する大きめの垂れ耳、太く飾り毛のついた垂れ尾が挙げられます。かつて作業犬だった頃には断尾されることもありましたが、現在では稀です。体つきは引き締まったコンパクトな筋肉質のボディで、被毛は滑らかなショートコートです。

毛色はバーニーズ・マウンテン・ドッグと同じく、ブラックを基調としたトライカラー（三色）です。黒い被毛に、目の上、頬、胸、脚、尾の付け根などにタン（黄褐色）とホワイトのマーキングが入ります。

サイズは中型犬で、オスは体高44～50cm、メスは42～48cm、体重は雌雄ともに25～30kgが目安です。この体格に比して非常に高いスタミナと運動量を持ち合わせているため、毎日の充分な運動が不可欠です。活発な遊びや長時間の散歩などを通じて、彼らの運動欲求を満たしてあげることが重要です。

性格は明るく陽気で、人懐こく友好的です。知性も高く、学習意欲があるため、基本的な服従訓練などは比較的容易に入ります。適切な社会化と訓練を行うことで、優れた家庭犬や頼れるワーキングドッグとして、飼い主との強い絆を築くことができるでしょう。

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