エンビカッタ

エンビカッタの概要

エンビカッタ（Plastic pipe cutter、Plastic pipe shear）は、主に水道用の硬質ポリ塩化ビニル管（塩ビ管）の切断を目的とした特殊な手動工具です。このカッタは、切断時に切り粉を発生させずにクリーンに管を切ることが可能なため、配管工事などで広く使用されています。日本で初めて開発されたこの工具は、その後世界各国に普及しました。

開発の歴史

エンビカッタの開発以前は、塩ビ管の切断は鋸によって行われていました。しかし、鋸使用時には、切屑の発生や切断面の粗さに不満を持つ作業者が多く、狭い場所での操作においても難しさがありました。そこで、1976年4月に松阪鉄工所（MCC）から記事の塩ビ管専用のクサビ刃物を使用したエンビカッタが発表されました。これにより、作業効率が大きく改善され、初のラチェット機構を採用したこともこの工具の特長として挙げられます。しかし、後に他社の特許に抵触したため、同年の12月にはリンク機構方式へのモデルチェンジが行われました。

技術的特徴

切断性能

エンビカッタでは、硬質ポリ塩化ビニル管やその他の樹脂管を、特に低温時でも破損を防ぎつつ、滑らかな切断面を実現できます。各メーカーは、切断時の最低温度や条件について具体的な指南を行っており、おおむね-5℃から40℃の範囲で使用可能です。このカッタの特筆すべきは、切断中に発生する切粉がないため、作業後の清掃が容易であることです。

機構の種類

エンビカッタのメカニズムには、いくつかの方式が存在します。代表的なものには、ラチェット機構とリンク機構があります。ラチェット機構は操作にかかる力を軽減し、利便性を向上させます。一方で、リンク機構は、刃の動きをコントロールしやすく設計されています。これにより、作業者は簡単に管に切り込むことができ、その切断能力が向上します。

刃の設計

エンビカッタの刃は一般的に2段のクサビ形状が採用されています。この設計は、対象材である樹脂管の特性を考慮に入れたもので、一段目の刃が管を切り込み、二段目の刃が切断荷重を軽減する効果があります。刃の角度や寸法は、切断時の圧力に大きく影響するため、各メーカーはこの要素について研究を重ねています。また、刃の素材としては、一般的にSK材が用いられており、稀にSUS材が使用されることもありますが、それぞれ特有の性質があります。

切断対象材の変遷

エンビカッタの適用範囲は広く、水道用の硬質ポリ塩化ビニル管や耐衝撃性管、ポリエチレン管など多岐に渡ります。各社の製品は、外径42mmサイズまでの切断が可能で、特に電気工事用の切断にも対応しています。また、切断可能なサイズは様々で、⌀26mmから⌀63mmまでの幅広い選択肢があります。

主なメーカー

国内には、松阪鉄工所（MCC）、室本鉄工（MERRY）、花園工具（VICTOR）など多くのメーカーが存在し、エンビカッタの開発と改良に携わっています。これらの企業は、利用者のニーズに応じて新たなモデルや機能追加を進めるなど、技術革新に努めています。

まとめ

エンビカッタは、工事現場での必需品とも言える便利な工具であり、その機構や技術は日々進化し続けています。操作の容易さや優れた切断性能により、数多くの作業者に重宝されているエンビカッタは、今後も多様な場面で活躍し続けるでしょう。

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