エヴリン・クルックシャンクス

エヴリン・クルックシャンクス（Eveline Cruickshanks、1926年12月1日 - 2021年11月14日）は、20世紀後半のイギリスにおいて、17世紀と18世紀のイギリス政治史研究を牽引した重要な歴史学者です。彼女の専門は、特にトーリー主義（Toryism）とジャコバイト主義（Jacobitism）に焦点を当てたものでした。

マルセイユで生まれたクルックシャンクスは、第二次世界大戦の影響で1940年にイギリスへ避難しました。その後、ロンドン大学で学び、学士号とPh.D.を取得。ロンドン大学歴史研究所で教鞭を執り、後に名誉フェローに選出されるなど、学術的なキャリアを積み重ねました。

クルックシャンクスの業績の中でも特に重要なのは、『英国議会史』プロジェクトへの貢献です。『英国下院史 1690年–1715年』の編集者の一人として活躍し、さらに『英国下院史 1660年–1690年』（1983年出版）と『英国下院史 1715年–1754年』（1970年出版）にも寄稿しました。これらの業績を通して、彼女は当時のイギリス政治における勢力争いや社会情勢を鮮やかに描き出しました。

彼女の研究は、単なる歴史的事実の記述に留まらず、政治思想や社会構造にまで深く切り込んでいます。2004年に発表された著作『The Atterbury Plot』は、アタベリー陰謀事件に関する初の包括的な研究として高く評価されています。この研究を通して、彼女はジャコバイト勢力の動向と、それがイギリス政治に与えた影響を詳細に分析しました。

クルックシャンクスは、ジャコバイト研究トラスト（Jacobite Studies Trust）の理事長および受託者を務め、ロイヤル・ステュアート協会の副会長も務めるなど、学会における要職を歴任しました。これらの活動を通して、彼女はジャコバイト研究の発展に大きく貢献しました。

私生活では、1956年に建築家のデズモンド・ワイス（Desmond Wyeth）と結婚しました。2013年から2014年ごろに歴史研究から引退し、2021年11月4日に亡くなりました。

主要な著作

Political Untouchables: The Tories and the '45 (1979)
By Force or By Default? The Revolution of 1688-89
The Stuart Court in Exile and the Jacobites (1995, Edward Corpとの共編)
The Glorious Revolution (2000)
The Atterbury Plot (2004, Howard Erskine-Hillとの共著)

関連人物

ロムニー・セジウィック：クルックシャンクスと同様に、『英国議会史』の編集者の一人です。

エヴリン・クルックシャンクスの研究は、17世紀から18世紀のイギリス政治史を理解する上で不可欠なものであり、彼女の業績は後世の歴史学者に大きな影響を与え続けています。

もう一度検索