エヴリー・リトル・シング

エヴリー・リトル・シング：ビートルズの隠れた名曲

1964年発表のビートルズ4作目のアルバム『ビートルズ・フォー・セール』に収録されている「エヴリー・リトル・シング (Every Little Thing)」は、グループの楽曲の中でも特異な魅力を放つ一曲です。作曲はポール・マッカートニーですが、リードボーカルはジョン・レノンが務めており、レノン＝マッカートニー作品の中でも、役割分担が珍しいケースとして知られています。

楽曲の誕生：ロンドンからアトランティックシティへ

マッカートニーは自身の自伝で、当時交際していた女優ジェーン・アッシャーの家の音楽室でこの曲を創作したと述べています。一方、他の資料では、1964年8月下旬、ビートルズがアメリカツアーで訪れたアトランティックシティで作曲されたとする説も存在します。レノン自身もインタビューでマッカートニーの作曲であることを認めており、自身も制作に関わった可能性を示唆しています。複数の証言や分析を総合すると、ロンドンでマッカートニーが作曲を始め、アトランティックシティでレノンと共に完成させたという見方が有力です。

レコーディング：ツアー中の多忙と貴重なテイク

「エヴリー・リトル・シング」のレコーディングは、ビートルズが世界中を駆け巡るツアー真っ只中に行われました。このため、レノンとマッカートニーのソングライティングは、通常時よりも制約を受けていた可能性があります。マッカートニーは、この楽曲が本来シングルとしてリリースされることを目指していたものの、シングルとして必要な魅力が欠けていたと振り返っています。

EMIレコーディングスタジオで、複数テイクにわたるレコーディングが行われ、最終的にテイク7が採用されました。レコーディング過程には、マッカートニーのゲップや爆笑といったハプニングも記録されています。楽器編成についても興味深いエピソードがあります。リードギターはジョージ・ハリスン、リズムギターはレノンが担当したとされていますが、過去の発言の食い違いから、この点については長年議論が続いてきました。また、この楽曲では、ビートルズの楽曲としては珍しくティンパニが使用されていることも特徴です。リンゴ・スターが演奏を担当し、コーラス部分で効果的に使用されています。

1969年のゲット・バック・セッションのリハーサルでも演奏されており、ビートルズメンバーにとってこの楽曲がいかに重要なものだったかが分かります。このリハーサル音源は、後にリリースされたアルバムに収録されています。

楽曲の評価：批評家とリスナーからの称賛

「エヴリー・リトル・シング」は、音楽評論家やリスナーから高い評価を得ています。感情的な深さ、テンポの変化、ハーモニーの素晴らしさなどが称賛されています。レノンとマッカートニーの歌唱力の高さも評価されており、一見地味な素材を、バンドの演奏によって豊かに聴かせることができる好例として挙げられることが多いです。

『ローリング・ストーン』誌の「100 Greatest Beatles Songs」では91位にランクインしており、その人気と普遍性を示しています。ミュージシャンからも「完璧な曲」と評されるなど、時代を超えて愛される名曲であると言えるでしょう。

カバーバージョン：様々なアーティストによる解釈

「エヴリー・リトル・シング」は、発表後、イエス、マーティン・ゴードンなど、多くのアーティストによってカバーされています。それぞれのアーティストが独自の解釈を加えたカバーバージョンは、原曲とは異なる魅力を放ち、楽曲の幅広い可能性を示しています。

まとめ：時代を超えて愛される名曲

「エヴリー・リトル・シング」は、ビートルズの楽曲の中でも、その独特の構成やレコーディングの過程、そして高い評価など、多くの魅力を兼ね備えた一曲です。作曲者、ボーカリスト、楽器編成など、様々な要素が複雑に絡み合いながら、普遍的な魅力を生み出していると言えるでしょう。これからも、多くのリスナーを魅了し続ける名曲として、その地位を確固たるものにしていくことでしょう。

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