オオクボシダ

オオクボシダ (Micropolypodium okutboi)

概要

オオクボシダは、ヒメウラボシ科に属するシダの一種で、日本においては主に本州の関東以西、四国、九州に自生しています。このシダは非常に小型で、見た目がコケに似ているため、自然環境では見つけるのが容易ではありません。明治時代の植物学者である大久保三郎に因み、その名がつけられましたが、実際に最初に採集したのは1877年頃の東京博物局員、小野職愨でした。

特徴

オオクボシダの特徴として、常緑性の草本であり、根茎は短い斜めの形状をしており、数枚の葉を束に展開します。特に葉が大きくても日本国内では最大で15cm程度、時折20cmを超えることもありますが、いまでは小型のものが主流です。国外、特に南の地域ではサイズが大きくなる傾向があります。葉柄は短めで褐色を帯び、2mmほどの毛が見られます。葉身の形状は狭披針形から線形で、羽状に深く裂けています。葉の先端は徐々に細くなり、裂片の形状や大きさも多様です。特に葉の裏面には硬い毛が生えています。胞子嚢群は楕円形で、葉の基部付近に配置されています。

名称の由来

オオクボシダという標準和名は、大久保三郎の名に因んでいますが、実際には彼が最初に見つけたわけではありません。また、他にも「ムカデシダ」「ヒメコシダ」「ナンキンコシダ」「ヨウラクシダ」などの別名があり、それぞれがこのシダの特性や外形に由来しています。特にムカデシダという名称は、葉の形状がムカデに似ていることから名づけられました。

生育環境

オオクボシダは山地の森林内に見られ、樹幹や岩の上に着生することが多いです。北部に分布するものは一般的に小型であり、岩の上に生えることが多く、南部のものは大型で、樹幹への着生が一般的です。また、他の植物と同様に、コケの隙間に生育することもあります。

分類

この属にはオオクボシダの他に類似の種はなく、近縁種としてはキレハオオクボシダが存在しますが、羽片の深裂とは異なり全裂であるため、見た目には明確な違いがあります。ほかにヒメウラボシ科には多くの種がありますが、本種はその中でも特に北に分布しています。

保護状況

環境省のレッドリストには明記されていないものの、多くの地方自治体で保護対象とされています。特に14県では絶滅危惧I類に指定されるなど、その数は減少傾向にあります。主な原因として、環境の悪化や交通整備による生育地の破壊が挙げられます。また、園芸目的での採集圧が、オオクボシダの減少に拍車をかけています。植物図鑑には、育成が非常に難しいことが記されており、数年持てば良いというのが実情です。

まとめ

オオクボシダは、その独特の形状や特性から見つけにくいシダでありながらも、自然環境において重要な役割を果たしています。その保護状況については懸念があり、今後の生息地を守る取り組みが必要です。

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