オオゲツヒメ

オオゲツヒメ

オオゲツヒメ（またはオホゲツヒメ）は、日本神話に登場する女神であり、食物の象徴とされています。彼女は主に『古事記』に登場し、五穀や養蚕の起源として語られています。その名前には「大いなる食物の女神」という意味が込められています。日本の食文化に深く根ざした存在であり、多くの伝説が彼女にまつわる形で残されています。

出自

オオゲツヒメという神の名前は、最初に『古事記』の中で発表されます。彼女は伊邪那岐命と伊邪那美命の国作りにおいて登場し、阿波国の別名として「大宜都比売」が記されています。この神の名は、四国の神々に関連していると考えられており、特に食物に関与する神として位置づけられています。その後、彼女に似た名前の神である「大宜都比売神」が神産みにおいて再び現れ、様々な神が生まれる中で彼女の存在を強調しています。そして、高天原を追放された須佐之男命に食物を提供する神として「大気都比売神」が登場します。

これらの神々が同一か異なるかは、はっきりとした結論は出ていませんが、一つの神話の流れの中で相互に関係していることは間違いありません。

説話

ひとつの具体的な逸話として、須佐之男命が空腹に耐えかねて、食物を求めて大気都比売神のもとへ向かう物語があります。この神は須佐之男命に様々な食物を提供しますが、彼がその様子を見てしまいます。すると、大気都比売神が食材を体の穴から取り出して調理している姿を目撃し、不快感を覚えた須佐之男命は怒りを抱き、彼女を殺してしまいます。驚くべきことに、彼女の身体からは様々な穀物が誕生します。これが大気都比売神の死後に起きたことから、彼女が食物の神であることがさらに強調される結果となりました。

また、島根県の石見地方では、大気都比売神の娘、乙子狭姫が雁に乗って地上に降り立ち、作物の種を人間に伝えたという伝説もあります。この話は、彼女が農業の神としての役割も持っていることを示唆しています。

日本書紀との比較

オオゲツヒメの物語は『古事記』においては五穀や養蚕の起源として語られていますが、『日本書紀』では別の形で似た伝説が語られています。具体的には、ツクヨミがウケモチを斬殺する話として表現されています。この二つの伝説のタイミングや背景には違いがあり、物語の中でのスサノオがどの段階で登場するかによって矛盾が生じています。このため、両者を比較することで日本神話における食物起源の神話がいかに多様に展開されているかを知ることができます。

説話の起源

オオゲツヒメの物語には、殺された者の身体から栽培作物が生まれるというテーマが含まれており、これはアジアやオセアニアを含む広範な地域で見られる伝説と似た要素を持っています。特に、芋が切断された後に再生することが、彼女に結びつく背景だと言われています。このことから、日本が穀物栽培を重視していた文化であることが、オオゲツヒメに五穀の神としての位置を与える要因となったと推測されます。

神社

オオゲツヒメを祀る神社も全国に点在しています。以下はその一部です：

• - 上一宮大粟神社（徳島県名西郡神山町）
• - 一宮神社（徳島県徳島市）
• - 阿波井神社（徳島県鳴門市）

オオゲツヒメは、日本の神話において食物や農業と深く結びついた神であり、その存在は現代の私たちにも影響を与え続けています。

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