オオボウシバナ

オオボウシバナ（大帽子花、学名：Commelina communis var. hortensis）は、ツユクサの栽培変種であり、一般にはアオバナ（青花）の名で広く知られています。滋賀県草津市では、その美しい花が市の花として指定されています。

特徴

アオバナは、通常のツユクサと比較して大型で、栽培された個体では高さが1メートルにも達します。花も大きく、直径4～5センチメートルほどになります。花弁の縁はわずかに縮れた形状をしています。開花時期は夏期（6月から7月）の早朝で、ツユクサに似た鮮やかな青色の大型の花を咲かせます。この花弁は、かつて京友禅の下絵を描くための染料である青花紙（あおばながみ）の原料として利用されていました。特に滋賀県草津市を中心とした湖南地方では、江戸時代中期から栽培が行われてきました。

染料としての利用

アオバナの青色色素はアントシアニン系の化合物であり、水溶性で色落ちしやすい性質を持ちます。この特性が、染織工芸、特に京友禅における下絵用の顔料として重宝されました。アオバナの色素で描いた下絵は、最終的には完全に抜け落ちて、染め上がった生地には残らないため、この性質が利用されました。

アオバナの花弁のみを摘み取り、絞って得られた青い汁を美濃紙に刷毛で塗ります。これを天日で乾かす作業を、紙の重さが元の4倍になるまで繰り返します。こうして作られた、青色というよりも黒く見える紙が青花紙として出荷されます。この青花紙を水に溶かした薄い青色の顔料が、下絵付けに使用されました。

過酷な栽培と利用

アオバナは、花弁が大きく、開花期には毎日新しい花を咲かせるため、収量が多く、商品作物としての栽培に適していました。しかし、早朝に開花した花は昼頃には萎んでしまい、搾り取った汁もその日のうちに使い切らなければ変質してしまいます。そのため、青花摘みと青花紙作りは、酷暑の中、休憩を取ることが難しい過酷な作業が連日続きました。その過酷さから、生産地ではアオバナは「地獄草」「地獄花」とも呼ばれていました。その後、化学的に合成された色素（化学青花）が代替として使用されるようになり、アオバナの需要は減少し、栽培量も減少しました。

健康食品としての可能性

2000年頃から、アオバナに含まれる成分に糖質吸収を抑制する効果があるという研究結果が報告されました。この研究を受けて、健康食品としての応用が進められ、茶や乾燥粉末などの商品開発が行われています。アオバナは、かつての染料としての役割を終えた後、新たな可能性を秘めた植物として注目されています。

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