オストウォルド賞

スーザ/ABAオストウォルド賞（旧称：オストウォルド賞）

概要

オストウォルド賞、正式にはスーザ/ABAオストウォルド賞として知られるこの賞は、アメリカ合衆国の吹奏楽界において、優れた吹奏楽曲を生み出した作曲家を顕彰するために設けられた、極めて権威ある作曲賞です。この賞を運営しているのは、アメリカ吹奏楽指導者協会（American Bandmasters Association、略称ABA）であり、その主たる目的は、質の高い吹奏楽作品の創作活動を推進し、その成果を広く知らしめることにあります。吹奏楽編成のために特別に作曲された作品の中から、特に優れたものが選ばれ、作曲家に対して賞が贈られます。

創設と歴史

この賞が創設されたのは1956年のことです。賞の設立にあたっては、マーチングバンドなどが使用する制服（コスチューム）の製造および販売を手がける企業である、オストウォルド・ユニフォーム社からの多大な財政的支援がありました。そのため、賞の名称には、この創設スポンサーの名が冠され、「オストウォルド賞」としてスタートしました。以来、数十年にわたり、アメリカ国内における吹奏楽の作曲活動を活発化させる上で、中心的な役割を果たしてきました。

賞の形式の変遷

オストウォルド賞は、その長い歴史の中で、時代の要請や運営方針の変化に伴い、授与形式や対象作品に関する改定を何度か行っています。特に注目すべき変遷点は以下の二つです。

1991年以降の委嘱制度導入と隔年化

1991年から、この賞の運営に大きな変更が加えられました。それまでの単年度の授賞形式に加え、受賞した作曲家に対して、翌年のABA大会のために新たな吹奏楽曲を作曲することが委嘱される制度が導入されたのです。これは、単に過去の業績を評価するだけでなく、受賞者の将来的な創作活動を積極的に支援し、新たなレパートリーの誕生を後押しすることを目的としていました。しかし、この委嘱作品の作曲、完成、そして翌年の審査・授与というプロセスを考慮すると、賞の授与が実質的に隔年での開催へと移行することになりました。

2011年以降のスーザ財団の支援と難易度別審査

2011年には、さらなる重要な改定が行われました。アメリカ吹奏楽の歴史において不朽の功績を残した作曲家、ジョン・フィリップ・スーザの名前を冠するジョン・フィリップ・スーザ財団（John Philip Sousa Foundation）からの追加的な支援が得られるようになったのです。これにより、賞の正式名称は「スーザ/ABAオストウォルド賞」と改められ、スーザ財団も賞の運営に関与するようになりました。また、審査対象となる吹奏楽曲の演奏難易度に応じて、隔年で審査対象を分けるという新たな方式が導入されました。具体的には、ある年には、吹奏楽教育の現場などで広く演奏されるグレード1から4までの、比較的演奏しやすい難易度の作品が審査対象となります。そして、次の年には、プロフェッショナルな団体や大学バンドなど、高い演奏技術を持つ団体向けの、グレード5から6の難易度の高い作品群が審査対象となります。この難易度別の審査方式の採用により、あらゆるレベルのバンドが演奏可能な、多様なスタイルの現代吹奏楽作品に光が当たるようになり、レパートリーの層を厚くすることに貢献しています。

吹奏楽界への貢献

スーザ/ABAオストウォルド賞は、創設以来、数多くの優れた吹奏楽曲を世に送り出し、現代吹奏楽の発展に計り知れない貢献をしてきました。委嘱制度による新作の創出支援や、難易度別の審査による幅広い作品への着目など、常に時代のニーズに応じた進化を遂げています。この賞は、アメリカのみならず世界の吹奏楽文化にとって、作曲家を育成し、新しいレパートリーを創出する上で、今後も重要な役割を果たし続けることでしょう。

もう一度検索