オノレ5世 (モナコ公)

オノレ5世・ガブリエル：苦難のモナコ公

オノレ5世・ガブリエル（1778年5月14日 - 1841年10月2日）は、1819年から1841年までモナコ公を務めました。激動の時代、モナコの財政再建に奔走しましたが、その道のりは困難を極めました。

生涯

オノレ5世は、オノレ4世とルイーズ・ドーモンの間に長男として生まれました。しかし、1793年にモナコがフランスに併合されたため、家族と共にフランス市民として生きることになります。フランス軍に入隊後は、ジョアシャン・ミュラや皇后ジョゼフィーヌの側近として仕え、第一帝政期を過ごしました。

1814年のパリ条約によってモナコはフランスから再独立を果たします。1815年、オノレ5世は、父オノレ4世を補佐していた叔父ジョゼフ公子に代わり摂政に就任。同年3月1日、パリからモナコへ向かう途上で、エルバ島を脱出したナポレオン1世と遭遇するという劇的な経験もしています。

ナポレオン失脚後、ウィーン会議の結果、モナコはピエモンテ＝サルデーニャの保護国となりました。1819年に父の死を受けてモナコ公となったオノレ5世は、モナコの経済状況を改善するために尽力します。

財政再建への苦闘

オノレ5世は、財政健全化のため思い切った増税を実施しました。また、祖父オノレ3世が開いたタバコ工場を取り戻そうとしましたが、サルデーニャ政府によって閉鎖されてしまいます。雇用創出、殖産興業、貧困改善のために工場群やオレンジ農園協同組合の創設も試みましたが、その努力は人々に理解されず、彼のやり方は専制的だと見なされてしまいました。

1815年の布告では、教区教会に教区民が自費で設置したベンチにまで課税対象としたため、人々はオノレ5世の吝嗇と強欲さを強く恨みました。人嫌いで公衆の前に姿を現すことのなかったことも、人々の不信感を増幅させました。こうした状況が、マントンやロクブリュヌ＝カップ＝マルタンといったモナコ領のコミューンの反モナコ感情を高めていったと考えられています。

私生活

私生活においては、自分の贅沢には金を使う一方で、他人には非常に吝嗇だったと言われています。家族への扶持も非常に少額に抑えられていました。宮廷の修史官ギュスターヴ・セージュによれば、オノレ5世は誰も信用せず、後継者となる弟フロレスタンのことさえも遠ざけていたと伝えられています。

生涯独身でしたが、愛人フェリシテ・ルオール・ド・ガマシュとの間に非嫡出子オスカル・グリマルディを儲けました。オスカルは認知されたものの、公位を継ぐ資格は有さず、フランスの地方官として生涯を送りました。

オノレ5世は、モナコ公として、その時代と社会の狭間で苦悩し、不人気ながらも国家の未来を模索した人物だったと言えるでしょう。

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