オライオン (固体燃料ロケット)

オライオン固体燃料ロケット

オライオン（Orion）は、アメリカ合衆国の航空宇宙企業であるアライアント・テックシステムズによって開発・製造された固体燃料ロケットのシリーズです。現在この事業は、同社が合併を経てノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズの一部となっています。このロケットファミリーは、様々な打ち上げシステムやミッション要求に合わせてカスタマイズが可能な、高い汎用性を持つ固体燃料モーターとして設計されています。

開発の経緯と起源

オライオンロケットの開発ルーツは、かつて人工衛星打ち上げ用としては特異な存在であった空中発射型ロケット「ペガサス」の各段に使用されていた固体ロケットモーター技術に遡ります。航空機から空中発射されるペガサスは、特定の軌道投入ミッションにおいて効率的な手段として利用されていましたが、その推進システムとして培われたノウハウがオライオンシリーズの基礎を形成しました。この起源を持つオライオンは、初期の空中発射型ロケットでの実績を基盤としています。

多彩な用途への展開

空中発射型ロケットの構成要素として生まれたオライオンですが、その設計の柔軟性から、やがて地上から打ち上げられるロケットシステムにも広く採用されるようになりました。様々なペイロードや軌道、あるいはミッションプロファイルに応じて最適な推力や燃焼時間を得るため、複数のオライオンモーターを組み合わせたり、特定のバリエーションを選択したりすることが可能です。このモジュール式の設計思想により、オライオンは多くのロケットプログラムにおいて信頼性の高いブースターや上段モーターとして利用されています。

特徴的な燃料組成

オライオン固体燃料ロケットの推進剤は、主にQDL（Quadricycle Dinitramine Liquidまたは類似組成）、HTPB（末端水酸基ポリブタジエン）という結合剤、そしてアルミニウム粉末を混合したコンポジット推進剤です。ただし、その組成はモデルによってわずかに異なります。多くのオライオンモーターは、QDL-1とHTPBを基材とし、これに重量比で19%のアルミニウム粉末を混合した燃料を使用しています。一方、Orion-32モデルにおいては、QDL-2とHTPBの組み合わせを基材とし、アルミニウムの混合比率が20%と若干高くなっています。アルミニウムは固体推進剤において燃焼温度を高め、推力を向上させる役割を果たします。

型番による識別

オライオンロケットモーターの各モデルは、その構成や特性を示すために特定の型番が付与されています。この型番は、モーターの基本的なサイズと、特定の機能や設計上のバリエーションを示すアルファベットの組み合わせで構成されます。

型番の冒頭に付く数字は、モーターの円筒部分の公称直径をインチ単位で示しています。主な直径として「38」または「50」があり、それぞれOrion 38シリーズ、Orion 50シリーズといった異なるサイズカテゴリーに属することを示唆しています。これにより、異なるサイズのロケットやペイロード構成に対応できる柔軟性が生まれます。

バリエーション型番の詳細

直径を示す数字の後ろに続くアルファベットは、そのモーターが持つ特定のバリエーションや改良点を示しています。主なバリエーション文字とその意味は以下の通りです。

- S: この文字は、特定の段、特に第一段として使用される場合にモーター本体が延長されているモデルを示します。燃焼時間を長くしたり、より大きな推進剤量を搭載したりするために設計されています。
- XL: 「XL」は、上記「S」タイプをさらに延長し、より大容量の推進剤を搭載可能にしたモデルを表します。これは、より大きな推力や長い燃焼時間を要求されるミッションに対応するために使用されます。
- G: この文字は、そのモーターが地上発射型ロケットでの使用を想定しており、ノズルが短縮されているバリエーションであることを示します。地上発射時には、ノズル長が打ち上げシステムや構造上の制約を受ける場合があり、それに対応するための設計です。
- T: 「T」は、モーターのスカート部分、すなわちノズルの末端部に取り付けられる構造が強化されているモデルを示します。スカートはノズルからの排気を効率的に外部に導く役割を果たしますが、特に構造的な負荷が大きい条件下での使用に耐えるよう補強が施されています。

これらの直径とバリエーションを示す文字の組み合わせにより、オライオンロケットモーターは多様な型番を持ち、それぞれの型番が特定の性能や形状、用途に合わせて設計されていることを示しています。このような細分化された型番システムは、様々なロケットシステムやミッションの要求に対し、最適な固体燃料モーターを選択・統合する際の助けとなります。

総じて、オライオンは空中発射ロケットの技術を基盤としつつも、地上発射型へと応用範囲を広げ、用途に応じたカスタマイズ性、モデルによる燃料組成の違い、そして詳細な型番システムを持つ、多機能で信頼性の高い固体燃料ロケットファミリーと言えます。

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