オリザ・ルフィポゴン

オリザ・ルフィポゴン（Oryza rufipogon）

オリザ・ルフィポゴンは、イネ科イネ属に分類される植物で、ノイネ、ヒゲナガノイネという和名や、英語では「weedy red rice」「brownbeard rice」、中国語では「普通野生稲」など、様々な名前で呼ばれています。

分布と生態

インド西部からインドネシアの島々にかけて広く分布しており、特に湿地や沼沢地を好んで生息しています。イネ（O. sativa）の原種の一つと考えられており、その生態はイネと多くの共通点を持ちます。多年生[[植物]]であり、夏の雨季には水面から茎を伸ばし、乾季になると種子を実らせます。茎の高さは通常150cm程度ですが、増水時にはさらに高くなることもあります。

栽培イネも、実は多年生ですが、収量性を高めるために一年生として扱われているのに対し、オリザ・ルフィポゴンは自然に多年生として生息しています。また、近縁種には一年生のO. nivaraも存在します。

オリザ・ルフィポゴンの大きな特徴の一つは、芒（のぎ）や種子が赤いことです。これは、栽培イネとは異なる重要な特徴であり、見分ける際のポイントとなります。

水田雑草としての側面

オリザ・ルフィポゴンは、水田に侵入する雑草としても問題視されています。栽培イネと混生すると、収穫量が減少するだけでなく、赤い種子が混じることで米の品質が低下し、商品価値を損ないます。また、種子が脱粒しやすいため、一度侵入すると翌年以降も発生しやすく、駆除が困難な雑草です。

特に、直播栽培を行う地域では、オリザ・ルフィポゴンの混入が深刻な問題となっています。栽培イネと同一種であるため、農薬で選択的に駆除することが難しく、農家を悩ませています。近年、苗代を使わない直播栽培が普及しつつある韓国でも、同様の問題が顕在化しています。

生息状況と保全

雑草として駆除の対象となる一方で、オリザ・ルフィポゴンは、湿地開発による生息地の減少によって、その数を減らしています。台湾ではすでに絶滅しており、フィリピンでもわずかな自生地を残すのみとなっています。中国では、国家二級保護植物に指定され、保全の対象となっています。

オリザ・ルフィポゴンは、イネのルーツを解明する上で重要な存在であると同時に、生物多様性を保全する上でも貴重な植物です。その保全と持続的な利用に向けた取り組みが、今後ますます重要となるでしょう。

参考文献

猪谷富雄『赤米・紫黒米・香り米 「古代米」の品種・栽培・加工・利用』 農山漁村文化協会、2000年3月 ISBN 4-540-99206-6
森島啓子『野生イネへの旅』 裳華房、 2001年9月 ISBN 4-785-38737-8

外部リンク

Oryza rufipogon Griff (英語) - Integrated Taxonomic Information System
Oryza rufipogon (英語) - National Center for Biotechnology Information（NCBI）
* Oryza rufipogon (英語) - IUCN Red List of Threatened Species

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