オルガン²/ASLSP

Organ²/ASLSP: 可能な限り遅く

『Organ²/ASLSP』は、現代音楽の巨匠ジョン・ケージによって作曲された作品であり、オルガンやピアノ用に編曲された楽曲です。この曲はその名の通り「可能な限り遅く」演奏されることを目指しており、実際の演奏時間は延々と無限にも及ぶため、世界で最も長い演奏時間を持つ作品の一つとされています。

歴史的背景

この曲が誕生したのは1985年、メリーランド州で開催された「創造と舞台芸術のためのサマーキャンプ」の間に行われたピアノコンクールの現代曲部門での課題曲としてでした。その後、1987年にオルガン曲として改編され、ケージ特有の「開かれた形式」が採用されました。この形式により、演奏はプレーヤーに委ねられ、同じ演奏が二度とないことが特徴です。通常の演奏時間は20分から70分とされているが、演者の自由によって演奏はその限界を超えさえします。

楽譜は約8ページにわたって構成されており、これがケージの作品における自由な解釈を象徴しています。

演奏の発展

2008年のARTSaha! Festivalでは、ジョー・ドルーによって24時間にわたる演奏が行われ、過去には9時間や12時間の演奏も既に経験していました。2009年にはタウソン大学でのダイアン・ルチェスによる14時間56分の演奏や、2012年にはアデレード大学での「ジョン・ケージ・デー」における8時間版の演奏など、多様な形態でのパフォーマンスが施されてきました。

ハルバーシュタットのプロジェクト

特に注目すべきは、2001年から始まったドイツのハルバーシュタットでの639年におよぶ演奏プロジェクトです。この企画は、ケージの演奏指示の解釈やオルガンの特性に対する理解からスタートしました。ハルバーシュタットを選んだ理由には、ナポレオン戦争時の廃止された聖ブキャルディ修道院の廃墟が舞台として最適であり、そこにある古代のオルガンの存在があることが背景にあります。

ハルバーシュタット大聖堂には、世界最古の常設オルガンがあるため、演奏地として最もふさわしいとされました。

特別なオルガン

この639年のプロジェクトのために特別に制作されたオルガンは、2009年に完成しました。このオルガンはブキャルディ教会の内部に位置し、演奏時には一定の音を保つためにふいごが必要であり、その音はアクリルガラスで囲まれた状態で現れます。

演奏の開始と音の変化

演奏は2001年の9月5日、ケージの89歳の誕生日に開始されました。最初の17か月間は無音状態が続いた後、2003年2月5日から音が鳴り始めました。音の追加や変更は計画的に行われ、演奏は2640年9月5日まで続くとされています。現在、演奏はリアルタイムでの中継は行われていないものの、多くの人々がこの作品の一部を体験することができました。

終わりに

『Organ²/ASLSP』は、単なる音楽作品にとどまらず、時間や音、芸術の概念を根本から問い直し、その可能性に光を当てる挑戦的な作品です。ジョン・ケージの革新性と、その考え方を新たに体現する試みは、私たちの耳に新たな理解をもたらします。

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