オルガ・ネメス

オルガ・ネメス：卓球の道を切り開いた不屈の女性

オルガ・ネメス（Olga Nemes, 1968年6月9日 - ）は、ルーマニアのムレシュ県トゥルグ・ムレシュ出身の元卓球選手です。6歳から卓球を始め、その才能を開花させました。1984年以降はドイツに拠点を移し、国際舞台で活躍しました。

若き才能の開花と亡命

ネメスは、ルーマニア選手時代から目覚ましい成果を上げています。1981年、1982年には国内選手権で優勝、1983年にはヨーロッパジュニア卓球選手権で優勝するなど、その実力は国内にとどまりませんでした。1983年の東京世界卓球選手権では、女子シングルスでベスト16に進出し、世界チャンピオンの曹燕華を苦しめる健闘を見せました。同年には、ヨーロッパトップ12で史上最年少の14歳で優勝するという快挙も成し遂げています。

しかし、当時のルーマニアはニコラエ・チャウシェスク大統領による独裁体制下にあり、自由な卓球活動が困難な状況でした。そのため、1983年にネメスはドイツへ亡命を決意します。1985年5月21日にはドイツ国籍を取得し、新たな環境で卓球選手としてのキャリアをスタートさせました。

ドイツ代表としての輝かしい実績

ドイツ国籍取得後、1985年11月からネメスはドイツ代表としてプレーする資格を得ました。しかし、1986年のプラハでのヨーロッパ選手権への参加は、ルーマニアからの引き渡し要求が懸念され、危ぶまれる状況となりました。チェコスロバキアが引き渡し要求を拒否し、ドイツへの帰国を保証したことで、無事に出場を果たすことができました。

ドイツ代表として170回も招集され、ヨーロッパ卓球選手権と世界卓球選手権にはそれぞれ8回出場しました。1996年と2000年には、ヨーロッパ卓球選手権女子団体で優勝という輝かしい成績を収めています。また、ドイツ国内選手権では、女子シングルスで5回、女子ダブルスと混合ダブルスで4回優勝するなど、国内でも圧倒的な強さを見せつけました。

苦難を乗り越えて

ネメスの選手生活は、決して順風満帆ではありませんでした。1987年には甲状腺疾患により7ヶ月間のブランクを余儀なくされましたが、不屈の精神で復帰を果たし、ドイツ国内選手権とワールドカップに出場しました。さらに、1995年のドイツ国内選手権では、出産後わずか8週間後にもかかわらず、シングルスとダブルスで優勝するという驚異的な偉業を成し遂げました。

2009年にはヨーロッパマスターズに出場し、40代にしてシングルスと、シルヴィア・カーンとのダブルスで優勝するという、年齢を感じさせない活躍を見せました。

引退後とプライベート

1987年5月には、ネメスの両親と妹のロビンもドイツに帰化しました。1994年8月には、ブンデスリーガ2部の元ハンガリー人サッカー選手と結婚し、息子スティーブンをもうけましたが、1995年に離婚しています。2003年以降は、ハンガリーで卓球教室を開き、後進の育成に力を注いでいます。

1986年には、自らの半生を綴った伝記 (Ingrid Weber-Söhnen 出版、1986年、ISBN 3926282002) を出版しています。

主な戦績

世界卓球選手権
1997年 マンチェスター大会 女子団体3位
ヨーロッパ卓球選手権
1990年 イェーテボリ大会 混合ダブルス3位(シュテファン・フェッツナーと)
1994年 バーミンガム大会 女子団体2位
1996年 ブラチスラヴァ大会 女子団体優勝
1998年 アイントホーフェン大会 女子団体優勝
2000年 ブレーメン大会 女子団体2位
ヨーロッパジュニア卓球選手権
1981年 トポリュチャニ大会 カデット女子シングルス優勝
1982年 ホラブルン大会 混合ダブルス優勝(ヨルゲン・パーソンと)
1983年 マルメ大会 ジュニア女子シングルス優勝 混合ダブルス優勝(ヨルゲン・パーソンと)
1984年 リンツ大会 ジュニア女子シングルス2位
1985年 デン・ハーグ大会 ジュニア女子シングルス優勝
ヨーロッパトップ12
1983年 クリーブランド (イングランド)大会 優勝
1986年 セーデルテリエ大会 2位
1988年 リュブリャナ大会 第3位
1989年 シャルロワ大会 優勝
1990年 ハノーファー大会 2位
1993年 コペンハーゲン大会 第2位
1997年 アイントホーフェン大会 3位

オルガ・ネメスは、その類まれなる才能と不屈の精神で、卓球界に大きな足跡を残しました。亡命という困難を乗り越え、ドイツ代表として数々の栄光を掴んだ彼女の姿は、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

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