オルトリナム男爵

オルトリナム男爵位は、イギリスの世襲貴族爵位の一つである。その歴史は、1945年に保守党の重鎮であったエドワード・グリッグが初代オルトリナム男爵に叙せられたことに始まる。

初代男爵エドワード・グリッグは、ケニア総督や枢密顧問官を歴任した人物として知られる。1945年のイギリス総選挙で労働党が勝利し、保守党が敗北すると、政界を引退。その引退を機に、グロスター州トーマートンのオルトリナム男爵に叙爵された。この叙爵は、戦後イギリスにおける政治的変化と、貴族制度の存続という複雑な時代状況を反映していると言えるだろう。

初代男爵の死後、爵位は息子のジョンが継承した。2代男爵ジョンは作家と政治家の顔を持つ人物で、多様な才能を発揮した。1963年に制定された貴族法は、爵位の一代放棄を認める画期的な内容を含むものであったが、ジョンは直ちにこの法律を利用して爵位を放棄した。これは、世襲貴族制度に対する批判が高まる中での異例な決断であった。爵位放棄後、ジョンには養子縁組した息子が2人いたものの、嗣子と認められず、爵位は弟であるアンソニーが3代男爵を相続した。

3代男爵アンソニーは、2020年にその生涯を閉じたが、彼の息子であるエドワードが4代当主としてオルトリナム男爵家の家督を継承した。現在、4代当主エドワードの息子であるエドワード・ローレンス・ダンダス・ド・ミラモント・グリッグが、法定推定相続人として爵位継承への道を歩んでいる。

オルトリナム男爵家の歴史は、イギリス政治史、貴族制度の変遷、そして個人の決断が複雑に絡み合った興味深い物語である。初代男爵から現代に至るまで、各代当主の生き様や選択が、この爵位の歴史を彩っている。特に2代男爵の爵位放棄という決断は、世襲貴族制度に対する現代的な視点と、時代の変化を象徴する出来事として注目に値する。

オルトリナム男爵位の歴史を紐解くことは、イギリスの歴史、社会、政治制度について理解を深める上で貴重な機会となるだろう。現代に至るまで続くこの家系の将来、そして世襲貴族制度そのものの行方について、多くの人々が関心を寄せている。

以下にオルトリナム男爵家の歴代当主を記す。

初代オルトリナム男爵：エドワード・ウィリアム・マクリー・グリッグ (1879–1955)
第2代オルトリナム男爵：ジョン・エドワード・ポインダー・グリッグ (1924–2001) (1963年に爵位一代放棄)
第3代オルトリナム男爵：アンソニー・ウルリック・デイヴィッド・ダンダス・グリッグ (1934–2020)
第4代オルトリナム男爵：エドワード・セバスチャン・グリッグ (1965–)

また、1963年貴族法は、オルトリナム男爵家の歴史を考える上で重要な位置を占める。この法律は、世襲貴族が爵位を放棄することを可能にした画期的な法律であり、2代男爵ジョンの爵位放棄はこの法律の施行によって初めて可能となったものである。この法律は、イギリスの貴族制度改革において重要な転換点として認識されている。

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