オンドル

オンドル（温突）とは

オンドル（온돌）または温突（おんとつ）は、朝鮮半島に古くから伝わる伝統的な床暖房システムです。かまどや炉で発生した燃焼ガスを、床下に設けられた煙道を通して床全体を暖める仕組みで、朝鮮半島では「クドゥル（구들）」、中国東北部では「炕（カン）」などと呼ばれています。

歴史

起源

オンドルの起源は非常に古く、新石器時代、紀元前5000年頃の遺跡からその痕跡が発見されています。現在の北朝鮮にあたる地域で発掘された住居跡には、明確なクドゥルの構造が見られ、住居と調理の両方を暖めるために使われていたと考えられています。

初期のオンドルは、炉の横に煙道の入り口があるため、炎が水平に広がり、煙が上昇してすぐに消えるのを防ぐ工夫がされていました。この仕組みにより、煙道を通る炎が部屋全体を暖めることができたのです。

語源

「クドゥル」は朝鮮固有の言葉で、「暖かい石」を意味する「クウンドル（구운-돌）」が語源とされています。一方、「オンドル（温突）」は漢字語で、19世紀末に導入されました。他にも、「장갱（長坑）」「화갱（火坑）」「난돌（暖突）」「연돌（烟突）」といった別名があります。

発展

オンドルの歴史は、旧石器時代から新石器時代、青銅器時代、三国時代、高麗時代、朝鮮時代と、長い年月をかけて発展してきました。

旧石器時代～新石器時代: 北朝鮮の遺跡から、オンドルの初期の形跡が発見されています。
青銅器時代: 原始的な暖房方法から発展し、朝鮮半島で2000年以上受け継がれてきました。
三国時代: 高句麗の壁画にもオンドルが描かれており、当時すでに広く使われていたことが分かります。
高麗時代～朝鮮時代: 部屋全体を暖める現在の形が登場し、富裕層を中心に利用されました。李氏朝鮮時代には、部屋の席次を定めるためにも使われ、16世紀には一般庶民にも普及しました。

現代

伝統的なオンドルは、一度温まると長時間暖かさが持続する一方で、大量の薪を必要としました。そのため、朝鮮半島では森林破壊の一因となりました。1960年代以降は、練炭を燃料とするオンドルが主流となりましたが、一酸化炭素中毒の事故が多発しました。その後、温水ボイラーが開発され、安全性が向上しました。

現在、韓国ではマンションなどの集合住宅で、温水式の床暖房が一般的になっていますが、そのルーツは伝統的なオンドルにあります。

方法

オンドルの基本的な仕組みは、台所の竈で煮炊きする際に発生する煙を床下に通し、その熱で部屋を暖めるというものです。床下には「クドゥルジャン（구들장）」と呼ばれる板石が敷き詰められ、その上に漆喰を塗り固め、さらに油をしみこませた厚紙を貼って仕上げます。

オンドルは、炊事の際の排熱を利用するだけでなく、暖房目的で竈に火を入れることもあります。また、夏場はオンドルに繋がらない別の竈を使用したり、床下の殺菌・殺虫のために定期的に火を入れることもありました。

燃料は、薪やわらから、練炭、灯油、ガス、電気へと変遷してきました。

オンドルと住宅構造

オンドルの存在は、朝鮮半島の住宅構造に大きな影響を与えました。

平屋: 床下を暖める構造上、2階建て以上の家屋は一般的ではなく、平屋が主流となりました。
台所の位置: 竈のある台所は、部屋よりも低い半地下式に作られました。
納戸: 台所の天井裏には「タラク」と呼ばれる納戸が設けられました。
席次: 台所に近い場所が上座とされました。
家具: 熱で木材が狂わないように、足付きの家具が使われました。
寝具: 床のぬくもりが伝わりやすいように、薄い布団や座布団が使われました。

また、朝鮮半島の住宅は、オンドルを前提とした寒冷で乾燥した気候に適した構造になっており、窓や出入口を小さくして冷気の侵入を防ぐ工夫がされています。一方、温暖な地域では、縁側や板の間など、夏に対応した開放的な構造も見られます。

その他のオンドル

日本の温泉地では、地熱や温泉の蒸気を利用した床暖房を「オンドル」と呼ぶことがあります。また、地熱で温められた地面にゴザを敷いただけの簡易な小屋を「オンドル小屋」と呼ぶこともあります。

オンドルは、朝鮮半島の伝統的な暖房システムであり、その歴史や文化的な背景を知ることで、より深く理解することができます。

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