オーガスタ・リー

オーガスタ・リー（The Honourable Augusta Leigh）は、1783年1月26日に生まれ、1851年10月12日にその生涯を閉じました。彼女は、第5代バイロン男爵の甥であるジョン・バイロンと、その最初の妻で5代目リーズ公フランシスの元夫人であったアメリア・オズボーンとの間に生まれた唯一の娘であり、後に世界的に著名な詩人となるジョージ・ゴードン・バイロン卿の異母姉にあたります。

オーガスタが生まれて間もなく母アメリアが世を去ったため、彼女は幼少期を母方の祖母にあたるレディー・ホルダーネスのもとで過ごしました。成人後、彼女は従兄であるジョージ・リー大佐と結婚しています。

異母弟のジョージとは、彼のハーロー校在学中など、直接会う機会は稀でしたが、彼の母公認のもと、頻繁に文通を交わしていました。二人の関係が特に親密になったのは、1804年にバイロンが実母キャサリンを亡くし、深い悲嘆に暮れていた時期です。オーガスタが送った温かい同情の手紙が、二人の心を強く結びつけるきっかけとなりました。

二人が共に過ごす様子は、傍目には単なる肉親には見えず、互いに深く愛し合っていることは、周囲の誰の目にも明らかだったと言われています。彼女との近親相姦という衝撃的な噂は、バイロン卿の結婚生活の破綻や、やがて彼がイギリスを去る一因となったと言われています。当時の社会において、近親相姦のスキャンダルは、個人の名声や地位、社会的な立場を全て失わせるほど致命的なものでした。

1814年の春、オーガスタは三女となるエリザベス・メドラ・リーを出産しました。この出産の数日後、バイロンは姉のケンブリッジシャーの自宅を訪れ、生まれたばかりの赤ん坊に対面しました。彼はこの子を自分の子だと確信したと言われており、親しい友人であったレディ・メルバーン（キャロライン・ラムの義母エリザベス）宛ての手紙の中で、「ああ、だが猿ではないよ。幸運にもね。」と記しています。これは、当時の迷信で近親相姦によって生まれた子供が奇形であるとされることを踏まえた発言でした。

娘に「メドラ」と名付けられたのは、バイロンが当時執筆していた詩に登場する女主人公に由来します。バイロンはこの詩を書いていた1814年1月の約3週間を、妊娠中のオーガスタと共に過ごしていました。オーガスタの夫であるリー大佐は、メドラの本当の父親について生涯疑念を抱くことはなかったようです。メドラは、他の兄弟姉妹と同様にリー家の子供として育てられました。

オーガスタ一家が、バイロンとその妻アナベラ・ミルバンクと共にレスターシャーの館で休暇を過ごした記録も残っています。後年、オーガスタは義妹アナベラに宛てた手紙の中で、メドラについて「ジョージに似ているわ。とてもユーモアがあるところが。」と記しています。また、バイロン自身にも「メドラはここにいます。」と書き送ったことが伝えられています。

メドラは成長後、親族からの経済的援助を絶たれ、娘と共に困窮していましたが、異母妹にあたるバイロンとアナベラの娘エイダ・ラブレス伯爵夫人が熱心に経済的支援を行いました。この過程で、メドラは自身の実の父親がバイロン卿であることを知るに至ったとされています。

なお、メドラもオーガスタも、バイロンとクレア・クレアモントとの間に生まれ、僅か5歳で夭折したもう一人の娘、アレグラ・バイロンと直接会う機会はなかったようです。

オーガスタとバイロンの関係は、後世の芸術作品にも影響を与えています。例えば、ドイツの作曲家アリベルト・ライマンは、バイロンがオーガスタに送った手紙に基づく歌曲《明かされざるもの―バイロン卿からオーガスタ・リーへ》を作曲しています。また、バイロンの劇詩『マンフレッド』も、この関係性との関連が示唆されることがあります。

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