オーバータイム (アメリカンフットボール)

アメリカンフットボールにおいて、第4クォーター終了時に同点の場合、試合の勝敗を決着させるために行われるのがオーバータイム（延長戦）です。引き分けを認めないルール下で、各リーグや大会によって異なるシステムが採用されています。

タイ・ブレーク・システム

主にNCAAや日本のアメリカンフットボールリーグで採用されているのが、タイ・ブレーク・システムです。このシステムは、先攻チームの有利性を排除するように設計されています。試合はコイントスで先攻・後攻、およびプレーサイドを決定し、両チームが敵陣25ヤード地点から攻撃を開始します。キックオフは行われません。

1ピリオド（両チームが1回ずつ攻撃を行う）ごとに点差がついた時点で試合は終了し、同点の場合は勝負がつくまでピリオドが繰り返されます。攻撃は、得点、ターンオーバー、または4回の攻撃終了で終わり、後攻チームが同様に攻撃を行います。この方式では、両チームが公平に攻撃機会を得ることができ、戦略性と緊迫感のある展開が生まれます。

サドンデス・システム

NFLで採用されているのが、サドンデス・システムです。このシステムは、コイントスで先攻チームを決め、後攻チームがプレーサイドを選択します。レギュラーシーズンとポストシーズンでは、ルールに違いがあります。

レギュラーシーズンでは、先攻チームがタッチダウン（TD）を挙げた場合は、その時点で先攻チームの勝利となります。しかし、フィールドゴール（FG）の場合は、後攻チームにも攻撃権が与えられます。後攻チームの攻撃終了後、点差がついた時点で勝敗が決定します。両チームの攻撃が終わっても同点の場合、試合は続行し、以降はどちらかのチームが得点を入れた時点でサドンデス方式で勝敗が決定します。レギュラーシーズンでは、オーバータイムが10分経過しても勝敗が決まらない場合は引き分けとなります。

ポストシーズンでは、先攻チームがTDを挙げた場合でも、後攻チームに攻撃権が与えられ、試合が続行されます。ポストシーズンでは、オーバータイムが15分経過しても勝敗が決まらない場合は、エンドを入れ替えて決着がつくまで延長が行われます。

過去には、NFLのオーバータイムルールは何度か変更されてきました。1974年には、それまでポストシーズンのみに適用されていたルールがレギュラーシーズンとプレシーズンにも適用されました。当初は、15分のピリオドを戦い、ポストシーズンでは決着がつくまでエンドを入れ替えて延長しましたが、その他の試合では1ピリオド終了時に決着がつかなければ引き分けとなっていました。2010年からは、ポストシーズン限定で先攻チームがFGを挙げた場合は試合を続行するルールが導入され、2012年には、このルールがレギュラーシーズンとプレシーズンにも適用されました。2017年には、プレシーズンとレギュラーシーズンのオーバータイムピリオドが10分に短縮され、2021年にはプレシーズンのオーバータイムが廃止されました。2022年からは、ポストシーズンに限り、先攻チームのTDでも試合が続行されるルールへと変更されています。

USFLのオーバータイム・システム

USFL（ユナイテッド・ステイツ・フットボールリーグ）では、独特のオーバータイム・システムが採用されています。このシステムでは、コイントスで勝利したチームが先攻または後攻を選択します。両チームは交互に2ポイントコンバージョンを3回ずつ試み、3回終了後に成功回数の多いチームが勝利します。3回を終えて同点の場合は、どちらかのチームが成功するまでサドンデス方式で試合が続きます。

オーバータイムが適用される試合

オーバータイムの制度は、NFLのレギュラーシーズンとポストシーズン全試合で採用されています。日本では、Xリーグで採用されており、関東学生リーグでは2006年度からレギュラーシーズンにも適用され、全試合で勝敗がつけられるようになりました。関西学生リーグでは、リーグ戦ではオーバータイム制は採用されていませんが、優勝校が複数の場合に行われる甲子園ボウル出場校決定のためのプレーオフでオーバータイムが採用されています。過去には1クォーター分を通常の試合手順で延長していましたが、現在は上記の方式に則り行われています。

アメリカンフットボールのオーバータイムは、各リーグや大会で異なるルールが適用され、そのシステムも複雑に変化してきました。それぞれのルールがゲームに戦略性や緊迫感をもたらし、ファンを魅了する要素の一つとなっています。

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